またまた口の話ですが

1. 舌出し体操でしわがなくなる
 冒険家の三浦雄一郎さんのお父さん、三浦敬三さんを紹介したいと思います。雄一郎さんも75歳でエベレストを登頂して話題になりましたが、三浦敬三さんもすごい人です。
 三浦敬三さんは、100歳を過ぎても年間に100日以上スキーをしていました。スキーといっても、整備されたゲレンデを滑るのではなく、スキー板をかついで山に登り、滑ってくる山スキーです。自然そのものの雪の上を滑ることを喜びとしていました。それだけたいへんな労力が必要ですが。
 感心するのは、100歳という長寿でありながら、ひとりで自活していたことです。買いものも自分でいって、もちろん調理をしています。
 だいたい100歳にもなると、家族の世話になっているか、施設に入っているか、人の世話になっている人が多いのですが、自立していたのは尊敬します。
 スキーに関する著作もあり、スキーが天職でしたので、日ごろからトレーニングは欠かせません。早く歩いたり、ゆっくり歩いたりをくり返す、インターバルトレーニングもその一つ。
 机やテーブルに手を置いて、片足で立って屈伸する体操もしていました。片足スクワットのようなものですが、テーブルに手を置いているので、安定していますから、これもいい体操です。
 三浦敬三さんが考案した、ユニークな体操のひとつが舌出し体操です。口を大きく開けて舌を出す体操ですが、年寄りじみた顔になるのが嫌だといって、いろいろ勉強して考案されたようです。
 三浦さんは、たいへんなメモ魔で読んだり聞いたりしたことを、これはいいと思うものはすべて手帳に記入していました。この体操も三浦さんが見聞きした事柄から生まれたものだと思います。
イ、口を大きく開けて、舌を思い切り前に出します
ロ、続けて舌を右のほうへ向けます
ハ、舌を正面に戻し、今度は左に向けます
 これを50回くり返します。50回もやると、あごも舌も疲れてきますが、三浦さんは毎日欠かさず、舌出し体操をしていました。
お孫さんの三浦豪太さんの報告ですが、敬三さんの顔にはしわが少なく、顔色もよくてツヤツヤしていたそうです。口を大きく開けますので、あごが外れないようにしてください。
 舌出し体操の効能ですが、顔のしわがなくなるかどうかはちょっと保証できませんが、食べるときの舌がよく動くようになるでしょうし、食べものを飲み込むときにも役立つと思います。
 食べものを飲む込む力を嚥下力といいますが、これは年齢とともに衰えていきます。嚥下力を鍛えるには、舌出し体操に加え、口をすぼめる、口を横にイーっという感じで広げる、頬をふくらます、咳をするなどをしてみましょう。嚥下力は、あまり意識することがありません。ふだんそんなに意識しないで食べていられるから、問題はないと思っていますが、食べるとすぐにむせたり、食べるのに時間がかかったりするようになるのは、嚥下力が衰えている可能性があります。
 食べる力、飲み込む力はまさに生きる力ですから、たいへん重要です。
 舌出し体操だけでなく、ほかの口を動かす体操もしましょう。

2. 舌を出さなくてできます
 三浦敬三さんは舌を思い切り出して、右左と動かしていましたが、舌を出さなくても口の中で舌を動かすことでも、同じような効果があります。
 唇は閉じたまま、歯の間から舌を出して、歯茎をなめるように舌を回します。右回しに50回、左回しに50回。
これは口の中をきれいすることもできます。
 よく噛むのは大切ですが、歳をとってくると食べものが歯と歯の間に挟まるようになります。舌というか口が異物を感知して、舌で食べものの残りを胃に送り込んでいますが、こうした感知能力が衰えたり、舌がうまく回らなくなったりしてくるので、どうしても食べものの残渣が残りやすい。
 じつは、この舌の体操をすると、唾液がたくさん出てきます。唾液には、口のなかの酸性をアルカリ性にする働きがあります。歯が酸によって溶けることを防いでくれますが、一方で、口の中もきれいにしてくれます。歳をとってくると、唾液の量が減ってきますから、この体操は有効です。
 唾液を出すトレーニングにもなります。ぜひやってほしいですね。
 食べものの残渣から細菌が発生して、それが肺炎の原因になることもありますから、口の中はきれいにしておくことが重要です。
 口の中で舌を動かすのは、どこでも簡単にできますから、習慣にしたいですね。
 また、舌の体操は、顔のゆがみを治すのにいいそうです。
 食べものを噛むときに、歯の右側か左側のどちらかで噛む習慣があります。わたしの場合、右側の奥歯が歯に亀裂の入る歯折になったりしたことがあったものですから、どちらかいうと左側で噛んでいることが多いですね。意識して右側で噛むようにしていますが。
 片方を噛むこと、片噛みといいますが、こうした習慣が顔のゆがみの原因になります。
 舌を口の中で回す体操をしてみるとわかりますが、舌を動かすと下あご、首のあたりまで動いている感じがします。
 ひとくち30回といいますが、しっかり噛んでいる人はいいのですが、あまり噛まずに食べている人はあごを動かすことがありません。
 あごを動かすことであごについている余分な肉が落ちてすっきりするかもしれません。
 ホウレイセン。女性が気にする小鼻の脇から口の端に向かって流れていくしわですが、これが薄くなっていくそうです。
 あごまわりがすっきりして、顔のしわが薄くなっていく。これは女性ならずともやってみたい。
 また、わたしの例で申し訳ないのですが、最近ガムを噛むようにしています。
 集中力が増すといわれていますし、ガムを噛んでいるとおやつを食べることが少なくなります。
 あごのまわりについた肉を落としたいと思っていますから、一石二鳥どころでなく、期待したいですね。