賢い患者になりましょう

◆ COMLの新医者のかかる10カ条
−あなたがいのちの主人公・からだの責任者−
(1) 伝えたいことはメモして準備
(2) 対話の始まりはあいさつから
(3) より良い関係づくりはあなたにも責任が
(4) 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
(5) これからの見通しを聞きましょう
(6) その後の変化も伝える努力を
(7) 大事なことはメモをとって確認
(8) 納得できないときは何度でも質問を
(9) 医療にも不確実なことや限界がある
(10) 治療方法をきめるのはあなたです

1. コムルの辻本さんが亡くなられました
このブログで紹介したことがありますが、ささえあい医療人権センターCOMLを設立して活躍しておられた理事長の辻本好子さんが亡くなられました。62歳でした。以前、わたしは、神奈川県で開かれた講演会で同じ壇上に立ったことがあります。また、編集長をしていた雑誌では、「賢い患者になりましょう」というコラムでたいへんお世話になりました。
コムルは、定款にその目的として、次のようなことを上げています。
 (1)医療を消費者の視点でとらえ、患者が自立して主体的に医療参加するよう、広く一般社会に呼びかけるための事業を行う。
 (2)患者一人ひとりが「いのちの主人公」「からだの責任者」として自覚を持つよう、「賢い患者になりましょう」を合言葉として広く社会一般に呼びかけるための事業を行う。
 (3)患者と医療者が対話を重ね、互いに気づき合い、歩み寄り、ささえあいながら、よりよいコミュニケーションづくりに関する事業を行う。
 (4)その他、医療におけるさまざまな問題点について、社会への具体的な提案を行い、開かれたよりよい医療の実現に寄与する。
「いのちの主人公」「からだの責任者」という言葉がいいですね。これに加えるとすると、「人生の主役」です。
自分のからだは自分で責任を持って管理すること、いのちは誰のものではない、自分のもの。そして、あなたの人生の主役はあなた自身。
責任があるところに自由もあります。
取材でお邪魔した糖尿病を主に診ているクリニックの受け付けに小さなメモのようなものが置いてありました。
何かなと思って、手に取ると、この「医者にかかるときの10ヵ条」でした。
COMLは、医療を受ける患者さんの背中に回って、応援しようという目的ではじまりました。
患者中心の医療を実現しようとさまざまな活動をしています。
患者中心といっても、患者のわがままを聞こうというものではありません。医療従事者も患者もいっしょになって、よりよい医療、患者のためになる医療を構築していこうと運動です。
当初は、患者の希望ばかり聞いて、医療従事者に文句をいう団体かというようなイメージもあったようですが、活動も約20年になって、いまや医療の現場でも非常に重要な役割を果たしているようです。
医者にかかるときの10ヵ条もこの活動のなかで生まれたものです。
ひとつひとつ説明していきましょう。

2. 対話のはじまりは挨拶から
当たり前のような気がしますが、お医者さんに診てもらうわけですから、よろしくお願いします、ということがはじまりです。
挨拶もしないで、イスに座って、さあ診ろという態度では、お医者さんとコミュニケーションをとろうとしていないことになります。
伝えたいことはメモをしていく。
これは重要です。診察時間は限られていますから。
「よりよい関係づくりはあなたにも責任が」
というのは、お互いさま、という言葉がありますが、これがたいへん重要です。患者も医者もお互いさま。
どちらか一方に押し付けていては、コミュニケーションはできません。
相手が悪いとばかりいっていては、はじまりません。

3. 納得がいくまで
これは、自分のからだのことだからです。
自分のからだは自分で守る、これが重要だといってきました。
自分のからだのことだから、真剣に納得がいくまで聞くことです。
医者は専門用語を学ぶために大学に通うといわれるくらい、医療の世界は専門用語だらけです。医師はそういう環境で育っていますから、つい専門用語を使ってしまいます。看護師さんも同じです。
お医者さんの話がよくわからなかったということをよく聞きます。
わからなかったらわかるまで聞く、途中でなんとなくわかったから、あきらめてしまわない。
もちろん診察時間は限られていますから、的確に聞く必要があります。
生活習慣病のように、長い間付き合うことになる病気の場合は、最初にすべて聞き出さなくても、診察のたびにいろいろ聞いていけばいいと思います。
わたしの友人が、がんになったのですが、奥さんがすごく勉強して、友人といっしょに診察室に入って、いろいろ質問をしたそうです。
友人にいわせると、もういいよ、という感じだったようですが、何度か診察にいっしょに通っているうちに、お医者さんのほうから今日は何か質問はありませんか、というようになったそうです。
がんばって質問をくり返しているうちに、医師との間に親密なコミュニケーションが生まれたのですね。
これもあきらめなかったからです。もちろん、相手の医師によっても違うと思いますが。

4. 医療は不確実で限界もある
いまの医療が、すべての病気は治せるわけではありません。
同じ病気でも、人によって症状には違いがあります。
 現在行われている治療は、ある意味で最大公約数的な治療といってもいいでしょう。
わたしたちの個性があるように、からだにも違いがあります。薬もまったく同じように効くわけではありません。副作用も違うでしょう。
お医者さんに行けば、病気はすべてよくなるし、まかせておけば大丈夫というものではありません。
医療に限界があることを知っておくこと。
これはなかなかむずかしいのですが、重要なことです。医療従事者を弁護するわけではありませんが、彼らも同じ人間ですし、間違いもあるでしょう。
お互いに、いい医療をしよう、受けたいと思っているはずです。
そこを理解しないと、いい方向にはいきません。
そして、最後の「治療方法を決めるのはあなたです」という項目です。
自分で納得し、治療を受けることが大切です。お医者さんにその治療法を勧められたにしても、決定するのはあなたです。
自分で決めた治療ですから、きちんと向き合うこともできます。