われらの世代がすべきこと

1. 僕らの時代
団塊の世代は、昭和22年から24年(1947年から49年)生まれた人たちのことをさします。
戦後すぐ、昭和21年に「産めよ増やせよ」という運動が政府の指導で行われるのですが、まだまだ戦争の傷跡も深く、食糧も不足していたし、なにより若い男性が少なかったこともあって、うまくいきませんでした。
昭和20年の平均寿命をご存じですか。
男性24歳、女性39歳です。
この数値を見たときには驚きました。戦争は確実に人の命を奪うものだということが平均寿命でもわかります。
戦争は終わりましたが、食糧事情も悪く、満足に食べものもない時代です。さらに、衛生状況も悪かった。その結果、新生児の死亡率も高かったと思われます。
ようやく少しずつ生活もよくなってきたのは戦後3年ぐらいたってから。
昭和22年から24年に子どもがたくさん生まれるようになりました。
第1次ベビーブーム、団塊の世代の登場です。
NHKの朝の連続ドラマ「おひさま」をたまに見るのですが、いまちょうど戦後の時代が登場します。
ヒロインにも子どもが生まれます。おそらく団塊の世代といわれる子どものひとりです。
以前友人から手紙をもらいました。彼もわたしと同じ団塊の世代です。
彼が手紙の中で、「わたしたちの世代は、あのころ希望の象徴だったと思う。戦争が終わり、新しい時代がやってくる。その時代の担い手になるには、まさしくこの子らだ」と。
続けて、バラックといわれるつぎはぎだらけの家々が建っている中、庭の物干しざおに、きっとおしめがたくさん干されていたはずです。
はためくおしめは、復興の旗だった。まさしく希望の印だった。
当時の日本人がみな同じように、おしめがずらっと並んだ庭先を見て、元気になったと思います。
わたしたち団塊の世代は、あの時代の希望の星だったのです。
いわれてみると、そんな気がします。

2. 高齢者になったわたしたち
希望の星もみな歳をとっていきます。いまや団塊の世代も60代。
あと20年もたつと、65歳以上の高齢者の割合が50%近くになるといわれています。
高齢者がふたりにひとりという状況を考えると、恐ろしい。
若ものが少なくなり、まわりを見ると年寄りばかりという状況はぞっとします。
わたしたちは、人数が多かっただけに社会での影響力を強いそうです。
これからもわたしたちの年代がどのように生きていくか、これが重要になってくると思います。
たとえば、歳をとるほど病気になる可能性は高くなります。
人数が多いので、みな病気を持って医師にかかるようなことになったら大変です。
わたしはずっと自分のからだは自分で守ろうといってきました。
医師に簡単に頼らない。
そのために、正しい知識を持とう、といってきました。

3. 高齢者の病気の特徴は
ちょっとここで、高齢者の病気の特徴をあげてみましょう。
折茂肇先生の「高齢期の病気の特徴」を紹介します。
折茂先生は、東京大学医学部老年病学教室教授だった人で、わたしもお目にかかったことがありますが、老年学という新しい研究分野を開いた人です。骨粗鬆症等の研究でも有名です。
「高齢者の病気の特徴」は、
1多臓器疾患が多い
2加齢に伴う各臓器の機能低下がある
3症状が非特異的で青・壮年と異なる
4高齢者に特有な病態である老年症候群(認知症、転倒、失禁など)がある
5薬剤に対する反応が青・壮年と異なる
6免疫機能が低下しており、病気が治りにくい
7患者の生活の質(QOL)、および予後が社会的要因によって大きく影響される
8加齢に伴い、個人差が大きくなる
以上の8項目です。
まず、持っている病気がひとつではない。高血圧があったり、ひざの痛みや腰痛をかかえていたり、糖尿病の人もいるでしょう。いろいろな病気を持っています。
病気の症状も若い人と違います。
肺炎は、高齢者が亡くなる病気ですが、ふつう発熱、咳、痰等の症状があるのですが、高齢者の場合、いきなり意識を失ったり、食べることがまったくできなくなったりするのです。
食欲不振でいえば、何気ないことのように思われますが、その奥に大きな病気が隠れていることがよくあります。
これは、義父をみていてそう思いました。それまで元気でわたしよりたくさん食べていたのですが、あるときからパタッと食べなくなりました。
特別におなかが痛いとかそういう症状は訴えてこなかったのですが、本当に食べなくなりました。
腰が痛い、圧迫骨折があったのですが、このときにすでに、胃潰瘍を起こし、それで食べられなくなったのですが、症状はまったくありませんでした。圧迫骨折や胃潰瘍は病院で検査してわかりました。
病気が治りにくいという特徴もあります。
義父の場合、入院して様子を見ることになったのですが、3カ月以上かかりました。なかなか治らない。
認知症、転倒、失禁などもふえてきます。これも高齢者に多いといえます。
転倒に関していうと、こんなところで転ぶかというところでも転んでしまいます。
坂道を下りるときにも、からだを支えきれないために、あっという間に転んでしまいます。それまで何度も上り下りしていた坂道でも安心できません。
薬に対しても、副作用が出やすいといわれています。病気をいくつも持っていますから、服用する薬の数もふえてきます。
その結果、副作用が出ることがふえるのです。処方された薬はできるだけ一ヶ所の薬局でもらうようにしましょう。薬剤師が薬のチェックをしていますから、薬が重なることもありませんし、飲み合わせもチェックしてくれます。医師に確認をとって薬を変更することもあります。
家族の状況、住まいといった社会的な要因によって、病状や予後が変わってきます。
これは個人差があります。そのこともよく知っておくことが必要です。
わたしたちの世代から、できるだけ自分のからだは自分で守るという覚悟をする必要が絶対にあります。