わたしにできること

以下の文章は、わたしが書いた『民間療法のウソとホント』のまとめの最後の部分です。
今年は、東日本大震災もあり、いま甘受している日常が続くものでないことをしみじみと感じた年でした。
本当に毎日毎日しっかり生きなければ、と思っています。



わたしの右の腎臓が委縮して機能していないのですが、左の腎臓も徐々に悪くなってきています。なぜ右の腎臓が委縮してしまったのかはわかりませんでした。
現在、腎臓を少しでも生かし続けようと、定期的に診てもらっています。
わたしはいわゆる健康診断より主治医の指示のもとで行われる検査を信用しています。そこで、毎年主治医の指示のもとで超音波検査を受けます。血液・尿検査は定期検診のたびに受けていますし、症状によって検査項目をふやしてもらい、チェックしてもらっています。
今回も超音波の検査を受けました。検査結果はすぐにわかるので、主治医のいるいつもの診察室に行くと、腎臓の数値の話になり、徐々に悪くなっていますが、これはいつものことといわれました。超音波の検査の話になると、医師の顔が少し曇りました。
「超音波の検査は問題がありまして、腎臓と膀胱を結んでいる尿管が膀胱と接するところに何かがあるみたいなんです」
といいます。泌尿器科で精密検査を受けてくださいといわれました。わたしの仕事を知っているので、どなたかご存じの先生はいらっしゃれば、その先生でもいいですよ、データをお渡しします、と付け加えました。
すぐに泌尿器科の医師を思い浮かばなかったので、同じ病院の泌尿器科で診てもらえるように依頼しました。
泌尿器科の医師に会い、精密検査の内容を聞きましたが、ちょうどそのとき締めきりの原稿を抱えていたので、精密検査は1ヵ月後にしてもらいました。
精密検査を受けるまでの間、原稿を書きながら、腎臓と膀胱をつないでいる尿管の病気について調べました。尿管がんを疑いました。初期ならば手術で切除すれば予後もいいが、転移していると生存率もかなり低いこと。そして、尿管は壁が薄く転移しやすいことがわかりました。手術は、背中から下腹部までかなり大きく開きます。
尿管がんで、もし初期でなかったら、手術はもちろん、抗がん剤などの積極的な治療を受けないことをカミさんと相談しながら決めました。積極的な治療を受けないで、どのような状態になっていくのか。その旅をわたしなり書いて、書けないところはかみさんに書いてもらおう。これがわたしの仕事になる。
そう思って、精密検査を受けました。CT検査と内視鏡検査です。CT検査で膀胱から、尿管、腎臓の状態がわかります。内視鏡検査は、尿道を経て膀胱へ内視鏡を入れて膀胱と尿管がつながっているところを見るわけです。
結果、膀胱憩室であることがわかりました。膀胱憩室とは膀胱の一部分が膨らんで膀胱の外に飛び出してしまう状態です。わたしの場合、膀胱憩室が尿管との接するところにあったのです。そのために、尿管が膨らみ、がんと思われました。そして、膀胱憩室が尿管に接するところにあるために、膀胱から尿が腎臓の逆流しやすく、右側の腎臓がだめになったのもそのせいだろうということでした。
いままで超音波の検査は受けてきましたが、今回はおしっこをできるだけ我慢して、膀胱がパンパンになった状態で検査を受けました。それで、結果的には膀胱憩室だったことがわかりました。
この間、人は死ぬものだということをしみじみ思いました。いまある日常が続くものと信じているが、そうではいかないのです。


死は明日からもしれない。


そんなに遠いことではない。


がんといわれた人は、そう感じたのではないでしょうか。
いまは、毎日をしっかり生きなければと痛切に思っています。
この本が少しでも患者さんの不安に答えることができれば、と願っています。
『民間療法のウソとホント』はここで。