しっかり笑ってみませんか

先日、久しぶりに落語を聞きに行きました。
東京にいたときは、友だちの友だちが上方落語家だったので、1年2回は彼の落語を聞きに行きました。
じつは、ある出版社のインターネットの番組ですが、著名な作家の講演や落語、医療健康情報を提供するものがあって、そのサイトのプロデューサーと知り合いになり、わたしもそのサイトでインタビュアーをしていました。その関係でこのサイトの落語はよく聞いていました。このサイトで紹介される落語は、東京の寄席で演じられたもので、現代の落語家の話が中心です。
仕事部屋にひとりでヘッドフォンをかぶって笑っていたわけですが、外から見たらさぞかし気持ちが悪かったでしょうね。
そんなわけで、現代の落語家にもずいぶん親しんでいました。その中でも、わたしが注目しているのが柳家喬太郎さん。彼の新作はとてもおもしろい。インターネットでもよく聞きました。
その彼と林家彦いちさんがやってくることがわかりました。林家彦いちさんも、その上方落語家の独演会にゲストとして出演していたので知っていました。
昔は、テレビやラジオでも落語の番組があって、よく聞いたものです。
人形町末広、上野鈴本、新宿末広といった寄席に何度か行ったことがあります。ホール落語も友人に誘われていきました。
名人上手と呼ばれる落語家たち、桂文楽林家正蔵古今亭志ん朝三遊亭円生柳家小さん春風亭柳朝、実際に話を聞いた落語家も結構います。
落語が好きなのですが、やはり生で聞きたいと思っていました。
柳家喬太郎さんは、期待にこたえたいい落語でした。今回演じたのは、たらちねとうどんや。たらちねというのは、長屋に言葉遣いのものすごくいい嫁さんがくるという話し、うどんやはうどんを食べにくる人の話。
ともに、設定は古いのですが、話がうまく、当時の雰囲気、季節などが十分に伝わります。もちろん、大笑いしました。


笑うことが健康にいいという研究があります。
わたしもお目にかかったことがありますが、岡山の伊丹仁朗先生。もともとは精神科出身ですが、内科に移り、その後心療内科的なアプローチからがんの治療を行っています。「生きがい療法」といっていますが、そのひとつにユーモアスピーチがあります。これは身の回りに起こった面白い話をまとめて学習会で話すというもの。
話をする人自身も楽しいのですが、聞いている人も楽しくなります。楽しく笑うことで、がんなどの病気と闘う免疫細胞のひとつ、ナチュラルキラーが活性化します。
1992年に大阪のなんば花月でがんや心臓病の患者さん19人に漫才や新喜劇を見てもらい、その前後で血液検査をして免疫力を調べたところ、ナチュラルキラー細胞が活性化されたのです。
1995年に、関節リウマチの患者さんと健康な人に落語を聞かせたところ、炎症を抑える物質が増加しました。
糖尿病の人に昼食を食べてもらった後、1日目は専門的な講義、2日目は漫才を見てもらったところ、2日目のほうが血糖値の上昇が大幅に抑えられることがわかりました。
笑うのは、からだにいいことが立証されました。笑いは副作用のない薬。


そして、笑うと頭が空っぽになる。
脳内リセットといいます。笑いを感じる脳は笑うことで異常に興奮し、その結果ストレス刺激の伝達経路が遮断されるのだそうです。つまりストレスを受けて動いていた脳の回路がいったん遮断され、リセットされるのです。
神経系、内分泌系、免疫系というからだの中のシステムは、それぞれ関係しています。ストレスが加わると、このシステムに異常が起こります。
ストレスはからだじゅうに影響を与えるのですが、この連携が笑いによっていったん遮断され、もう一度取り組み直すことが起こるのだそうです。リセットされるといってもいいでしょう。
脳内がリセットされるのは、笑いのほかに泣く、よく眠ることです。確かに涙を流して泣くとすっきりします。ぐっすり眠ったあともすっきりします。
これが脳内リセットなのです。


笑ったふりをすることでも効果があるといわれていますが、やはり声をあげて笑うことをお勧めします。
落語をホールで聞いたのですが、お客さんがみな声をあげて笑っているでしょう。これはいいと思いました。
みんなで楽しいという感情を共有していること。これが大切です。