部屋の灯りを少し落として

ヨーロッパなどでいくと、ホテルの部屋の照明がずいぶん暗いような気がします。ホテルの部屋に限らず、ホテル全体も暗い印象があります。これは、ヨーロッパは石造り、煉瓦造りの建築が多く、古いものほど、電気の回線をめぐらすことができないために、新しい電灯器具が使えず、昔ながらものを使っているからだそうです。

それにくらべ、日本はずいぶん明るい感じがします。


日本人は、明治時代から明るいことに憧れがあったようです。岩倉具視をはじめとする政府の要人が明治維新後にヨーロッパを訪れますが、彼らが驚いたのはガス灯です。江戸時代、外は月明かり、星明かりだけが頼りでほぼ真っ暗に近い状態でした。それがヨーロッパではガス灯の光で明るかったのです。ヨーロッパでもガス灯が普及したのは、直前のことだったようですが、これが文明だと思ってしまったのです。


また、第2次世界大戦中は、灯火管制といって、夜間の空襲の目標とならないように、電灯の明かりが外にもれないようにしたり、灯りそのものをつけなかったりしていました。戦後、灯りをつけてもいいようになり、人々は煌々と光り輝く灯りそのものを平和の象徴のように感じました。
日本人はことさら明るいことを好むようになった理由ではないかといわれています。


また、日本の家屋は天井裏があり、電気の配線工事がしやすく、照明を明るい蛍光灯に変えるのが簡単でした。
ヨーロッパが暗いのは、まだ部分的な証明として白熱灯が使われているためで、日本のように蛍光灯がそれほど普及していないからという説があります。


しかし、必ずしも明るいほうがいいとは限りません。とくに夜は、多少暗いほうがよく眠れます。

昨今の節電に協力することもあり、部屋の明かりを少し暗くし、必要があれば手元を明るくするようにしたらどうでしょう。
明るいところで本を読まないと、目が悪くなるといわれていましたが、これは俗説で根拠のないことがわかりました。多少暗くても大丈夫です。

眠りということでは、概日リズムという体内リズムをコントロールしている松果体からメラトニンが正しく分泌させるためには、部屋を暗くする必要があります。

寝室に限らず、暗いからといって部屋の中を煌々と明るくするのをやめて、すこし暗くしてみませんか。
部屋の中を少し暗くすると、からだがリラックスします。目から入ってくる灯りの量を調整しましょう。
夜もまるで昼間のように明るくして、そこで作業をしていると、メラトニンが分泌されにくくなり、いわゆる「現代型不眠」を起こしているといいます。
夜になったら、部屋の中は少し暗くしてください。