第3の目について

カマキリやカナヘビというトカゲの仲間には、「頭頂眼」という第3の目を持つものがいる。頭頂眼は、ほかのふたつの目と同じように、水晶体と網膜を持っているが、映像をとらえることはできず、光を感じて体温の調整やホルモン分泌を行っていると考えられている。


わたし人間も「第3の目」と持っている。この第3の目は「頭頂眼」のように顔の表面にはなく、わたしたちの脳の中にある。脳の奥にある。
ご存じのように、脳は左右に大きく分かれているが、この左右の脳の間に小さな器官がある。松果体というが、これが第3の目だ。
松果体は、細胞レベルで調べると、眼、とくに網膜の細胞と同じような構造を持っている。松果体になる細胞は、ごく若い胚の時期には、レンズ、色素上皮、網膜など、眼になる細胞を持っていて、眼になる可能性があったというのだ。
松果体は、脊椎動物のほとんどが持っているが、なぜ第3の目にならなかったのか。


この松果体が第3の目にならなかったのかを、30年以上にわたって研究をしている神経発生生物学が専門の奈良女子大の荒木正介教授は、「脳の中という特殊な環境が、眼になることもできる細胞を、眼ではなく松果体にする」ことを明らかにしている。
わたしたちの祖先をたどっていくと、ナメクジウオにいきつくのだそうだ。ナメクジウオは目がひとつしかない。
わたしたちの脳は左と右に大きく分かれているとが、この脳が分かれていく過程で、眼もふたつに分かれたのではないといわれている。


ひとつの目でも見ることが十分にできる。しかし、ふたつの目を持つことで、より立体的に確認し、さらに見ているものとの距離もつかめるようになった。
これが、生物が生きるうえで、非常に重要なことであり、それが進化をくり返すうちにふたつの脳とともに、眼も左右に分かれたと考えられる。


さて、第3の目の位置だが、もともとひとつの目のあったところにある。
しかし、それは、脳の奥に入ってしまったのである。
第3の目の機能は非常に重要で、光を感じ、体内リズムをコントロールすることである。メラトニンという物質を分泌し、眼が覚める、眠くなるといったことから、体温や血圧の上下、ホルモン分泌を調整している。
第3の目である松果体にきちんと働いてもらうためには、朝日を浴び、夜になったら部屋を暗くすることが必要なのである。
光は目や皮膚から感じているが、最近の研究では、眼や皮膚の細胞以外でも光を感じていることがわかってきている。しかし、これらの細胞のすべてをコントロールしているのは、第3の目、松果体である。
第3の目を持っていることを忘れずに生きたい。
部屋中明るくして、夜更かしし、朝日を浴びない生活を送っていてはいけないのだ。