ゴクンと呑み込んでください

のどが少し変だから、とやってきた友人がいます。食べものが引っかかるような気がするといいます。食道がんの前兆に食べものが引っかかる感じがするというのがありますから、専門医に一度診てもらうようにとアドバイスしました。
後日、連絡があり、何もなかったということでしたが、専門医から老化ですね、といわれたと少しショックのようでした。


三浦敬三さんが、毎朝舌出し体操をしていたとことは紹介しましたが、ものを飲み込む力は歳とともに衰えていきます。そこで、舌出し体操と教えるとともに、食べものを食べてのどに送り込むときにゴクンといって飲み込むようにいいました。


わたしたちが、ものを食べると歯でよく噛み細かくして、舌でいったんかたまり(食塊)にします。かたまりにして、食道に送り込んでいます。ですから、食道を通るときは、ゴクンという感じになります。食べものを細かく砕くのは歯の役割ですが、かたまりにするには舌の動きが重要です。舌出し体操が有効ですが、このときにのどの筋肉も鍛えることができます。


食べものも水もいったん口の中でかたまりにして、ゴクンと飲みこむと、のどのまわりにある免疫システムが刺激されるのです。
わたしたちののどには、ぐるっと取り囲むように扁桃があります。昔は扁桃腺といっていましたが、現在は扁桃といいます。のどの左右にある口蓋扁桃、舌の根元にある舌扁桃、のどの奥にある咽頭扁桃、それに耳管とつながっている耳管扁桃、そのほか咽頭側索、咽頭後壁リンパ濾胞(ろほう)と、まさにのどの周囲を囲んでいます。
扁桃は、口や鼻から入ってくる細菌やウイルスを撃退する関所のようなものです。この関所を刺激することで、からだ全体の免疫システムが刺激され、免疫力が高まるのです。


胃ろうといって、胃に直接穴をあけて食べものを送り込む方法があります。脳梗塞の後遺症のために口にマヒがあり、上手に食べられない人、食べることはできても誤嚥性の肺炎をしょっちゅう起こすような人に用います。


東北大学老年医学助教の小坂陽一医師によると、胃ろうにする前にすでに寝たきりの状態だった人が、胃ろうにしたあと生きられる年数は、統計的な数字では約半年だそうです。寝たきり状態でなかった人が胃ろうにした場合でも、約2年だそうです。
胃ろうにすると長生きできないのは、免疫力が衰え、肺炎などの病気にかかりやすくなるからではないでしょうか。
口から食べることが長生きの秘訣です。そのためには、舌出し体操とゴクンと飲むことを習慣にしてください。