胃を切った人は長生き

先日、取材した医師から、胃がんで胃を部分切除した患者さんをその後ずっと診ているが、長生きしている人が多いという話を聞いた。「あくまでも個人的な感想ですが」と、断られていたが、胃を部分的にとってしまったために、いっぺんにたくさんの食べものが食べられなくなり、自然と少食になっていく。
食べすぎが高血圧、糖尿病、脂質異常症といった、生活習慣病の原因になることは間違いがない。食べすぎをやめ、さらに腹八分、腹七分というように少食にすることで健康長寿に結びつくことが知られてきた。医学的には、カロリー制限というが、その実践者は100歳になった聖路加国際病院日野原重明先生である。
一方、人類が否応なくカロリー制限された時期が戦争中である。第2二次世界大戦下のロンドン。日本でもそうだが、食糧事情が悪く、食事はすべて配給制になった。栄養は足りているとはいえない状況である。研究者の間では、戦争という大きなストレス、栄養不足というふたつの理由で、亡くなる人はふえると思われていた。
ところが、戦争による直接の被害で亡くなる人をのぞいて調べると、死亡率は高くならなった。さまざまな研究が行われたが、カロリー制限と寿命の関係が明らかになるにしたがい、食糧事情が悪いことが結果的にカロリー制限状態となり、亡くなる人が少なくなったのではないかと結論付けられた。
胃がんによって胃をとり、少食になったと同じように、戦時下の食糧事情が少食をつくりだし、それが長寿につながったのである。
現在、アメリカでは肥満者や糖尿病患者に、胃を切除して食べる量を減らし、栄養過多を防ぐ方法が実際に行われている。
胃を切除するのはしたくないが、食べすぎはやめたい。できれば、少食をこころがけたい。食べる量をまず1割減らす。これが日常的にできるようになったら、2割、そして3割と減らしていく。それ以上減らす必要はない。
まず、1割残すことをやってみよう。