稲刈りをしながら

八ヶ岳を望む田んぼ。稲は天日干しにする
毎年、この季節は稲刈りをする。
友人の田んぼを手伝っているので、田植えと稲刈りは季節の行事になっている。
八ヶ岳南麓も暖かくなるころに田植えをし、秋が色濃くなってくるこの時期は稲刈りである。
季節の移ろいを感じるとともに、収穫の歓びが味わえる。自然豊かな地に暮らしていると実感する。

日本で見つかった水田の跡は2500年前のものだという。二期作をするところもあるが、おおむね1年1度しか稲の収穫ができないから、わたしたち日本人は稲作の収穫を、2500回しか経験していないといえる。
稲作農業をしている人が一生の間稲作ができるのは30年から50年だから、個人の稲作の経験は30回か50回である。経験した回数が多ければ多いほど、その知識は役に立つといわれるが、稲作の経験はあまりにもわずかといえるだろう。
稲作は天候に左右される。今年のように猛暑の夏もあれば、冷夏といわれる夏もある。天候によって対応を変えければならない。害虫もある。土地の古老に聞いても、その経験は20回から50回ぐらいだから、すべての天候に対処できる方法を持っているわけではない。それだけに、伝承が必要なのだが、機械化が進むにつれて、伝承そのものが急速に失われていっている。伝承を求める人も少なく、伝える人も高齢化している。

稲作に限らないが、わたしたちが口にするものは長い月日を必要とするものがほとんどだ。食べものをじっくり見て、時間の流れを感じてほしい。