愛病院精神とは

武弘道さんの『こうしたら病院はよくなった』(中央経済社)という本を紹介します。ちょっと古い(2005年発行)のですが、内容はいまでも新鮮です。
著者の武弘道さんは、かつての埼玉県の病院事業管理者で専門は小児科。平成5年の鹿児島市の病院事業管理者兼院長となり、この病院は平成10年に優良病院経営病院として自治大臣の表彰を受けています。その実績がかわれ、平成13年に埼玉県にスカウトされました。埼玉県の4つの県立病院の経営をし、3年間で57億円の収支改善(黒字)を行い、『埼玉のゴーン』と呼ばれました。残念ながら2009年に亡くなっています。


この本は、北杜市の医療を考える会をいっしょにやっている友人、岡野淳さんから借りぱっなしになっている本です。岡野さん、申し訳ありません。


地域医療を考えるうえで、たいへん示唆に富んでいる内容です。

この本の中で、なるほどと思ったことはいくつもあるのですが、とくに感じたのは、「愛病院精神」です。
病院を愛すること。
病院経営にさまざまな人がかかわってくるのですが、みな一様に病院を愛しているのです。だから、病院が再建できたといいます。
わたしは、病院を愛するということは、まずそこで働いている人がその病院を好きになることからはじまると思います。

近くの富士見高原病院を取材したとき、働いている看護師さんたちが、「家族が病気になったら、ここに連れてくるよね」といっていました。
取材したときの院長井上先生も、まずそれを目指したといいます。『遠くの親戚より近くの高原病院』というモットーそのもの。
しかし、愛病院精神を持てない病院もあるのです。別の病院の看護師さんの話ですが、富士見高原病院とはまったく反対に「いま働いている病院に、家族を絶対連れてきません」といっていました。
働いていれば、病院の内情もすべてわかります。だから、連れてこないというのですが、患者としては、そんな病院にはやはり行きたくはありません。

しかし、どうすれば愛病院精神を持つことができるようになるのでしょうか。
これは意外とむずかしい。
医療者だけでの問題ではなく、患者の側にも問題があるのではないでしょうか。
昔はよくないといわれていた病院が努力をして、よくなっていることもあります。あまり噂やかつての印象だけで思いこんでしまうのはやめたほうがいいでしょう。


病院も人が動かしています。人は変わるものです。
あきらめないで、応援することです。
病院がよくなることは、患者にとってもとてもいいことです。
悪口はよくないことですが、それはいつのことか、いまはどうなっているのか、ということをしっかりと聞くことです。悪口も見極めたい。
それになによりよかったことを伝えていきましょう。