スノーシューとときめき脳

    

 北八ヶ岳に行ってきました。今回は、山頂を目指す登山ではなく、スノーシュー(西洋かんじき)を履いて、雪山を楽しんでこようと山の仲間に誘われました。
スキーはちょっとしたことがありますが、スノーシューははじめて、本格的な冬山もはじめてといっていいでしょう。
昨年八ヶ岳をはじめ、北アルプスに誘ってくれた山のリーダーから、冬山は素晴らしいですよとずっといわれてきましたし、できれば冬山登山に挑戦してみたいと思っていたので、この誘いはうれしかった。


 北八ヶ岳は、長野県の蓼科の奥にあり、北八ヶ岳ロープウェイを使えば、標高2200mまで一気に登ることができます。
ロープウェイの山頂駅から、北横岳までは往復で4時間、冬には完全の結氷してしまう雨池まで往復で4時間、麦草峠まで片道2時間半のルートがあります。もちろん、北八ヶ岳の縦走もできます。このルートの時間は小学生の子どももいっしょに歩いた時間ということですが、夏山の時間ですから、積雪のある時期はもう少し時間がかかると思っておくといいでしょう。
ロープウェイの山頂駅の付近は、坪庭といわれる雪原が広がっています。
もうここから、まったくの冬山でした。


今回は、スノーシューで雪原を歩きまわったり、絶景ポイントを探したりしながら、麦草峠方面へ歩きました。平日ということもあって、行き交う人にも出会いません。
麦草峠に向かう途中、中央アルプス北アルプスが一望にできる絶景ポイントがありました。ベンチがあるのですが、ベンチの下に少し下りただけでも腰まではまってしまうほどの積雪です。2m近くあるでしょうか。
雪の表面に薄い小さな板ガラスが散らばっているような雪の結晶を見ることができました。こんな雪は見たことがありません。わたしの住んでいるところが標高1000mで、雪はさらってしていますが、やはり2000mを超えると雪質も違います。
雪の上でお昼を食べ、ホットワインラム酒を楽しみ、そして縞枯山方面へ。縞枯山に登ろうという計画もありましたが、縞枯山荘も閉まっていたし、無理をせず、山頂駅に戻りました。
このままロープウェイで下りる方法もありますが、冬山を味わうためにも、ロープウェイを使わず、スノーシューで下山することにしました。下山ルートは1時間半とありますが、2時間はかかりました。


スノーシューは、スキー場でレンタルしたのですが、これが結構重かった。わたしは、ひざが弱くなって登山をやめていたくらいですから、山では登りより下りが苦手です。夏山では、靴はもちろんものすごく軽いもので、荷物もできるだけ軽くしてひざに負担をかけないようにしています。
雪道は大きな段差がなく、ひざへの負担は少ないのですが、いかんせんスノーシューが重い。
山のリーダーは、スノーシューを使わず輪かんじき、通称「わかん」をはいて歩いていたのですが、下山中のわたしを見て、「わかんを使ってみませんか」と声をかけてくれました。さっそく借りてみると、こちらのほうが断然軽く、身動きも自由にできる。わたしにはこちらが向いていると思いました。
スノーシューは、雪の上で浮力が大きく、沈み込みが少ないのですが、後ろに戻ったり、方向を変えたりするのがなかなかスムーズにできません。わたしの借りたものはとくに大きく、それだけ雪の中にはまらないのですが、スキーのようにキックターンをしなければ後ろに方向を変えることができないので、このスノーシューでは冬山の登山にはあまり適していない感じです。スノーシューにもいろいろあるようで、冬山登山に向いているものもあるはず。



それにしても、雪野原を歩くのは楽しかった。


以前、アンチエイジングの原稿で、ときめき脳の話を書きました。
脳がときめくことが、アンチエイジングにはたいへん有効なのですが、日常生活ではときめくことはなかなかあまりありません。
そこで、冬に雪原を歩くというアンチエイジングキャンプを企画したところ、ときめき脳が刺激され、免疫力も高まったというデータを紹介しました。
スノーシューを使って雪原で歩くとき、他人のあとを追っていくのではなく、自由に自分の好きなところに行きなさいというと、みんなてんでんばらばらになって四方に散っていきます。戻ってきたときの顔を見ると、みなじつに晴れ晴れとしてすっきりしています。目もきらきらと輝いて、心底楽しいという感じです。ときめき脳がまさに刺激されているのです。

雪原を歩くスノーシューを使ったイベントがメインですが、このキャンプに参加したとき、終了したときに血液検査をすると、ナチュラルキラー細胞というからだのなかでがんやウイルス殺すリンパ球がふえていました。5倍もふえていた人もいたそうです。それだけ免疫力が高まったというわけです。


雪が降ってくると大人でもこころがときめきますが、誰に踏み入ったことのない雪原に足跡をつけていくのは、もっとこころときめく行動です。
決められた道やコースを踏みはずし、自分の思いのままで行動することがいいのです。これがときめきのはじまりです。
それがスノーシューでできます。人のあとを、踏み固められた道を歩く必要はありません。自由に雪原に踏み出していいのです。もちろん、危険でないところですが。
これがなんとも気持ちがいい。
前に誰も歩いていないというだけで、自分が解放され、ときめき脳が刺激されます。


子どものころは、目にするもの聞くもの、すべてが新鮮で、驚きもあったし、当然ときめきもありました。それが、年齢がいくにしたがい、経験値が広くなり、滅多なことでは驚かないし、ときめくこともありません。
雪原を歩くと、子どものころ感じたときめきが起こるのです。
雪はすべて覆い隠してしまいます。道路はもちろん、人の踏み跡も、雪の下に隠れて見えなくなります。いままでふつうに歩いていた道も、雪が降ったあとなら、真新しい道になります。そこを歩いてみましょう。
スノーシューをはいて雪原に行かなくても、ときめき脳が刺激されることは間違いがありません。