歯について本を書きました

 いよいよ歯の本が発売になります。
原稿を書き終わったのは昨年の春です。編集者と何度も何度もやり取りをして、原稿を書き直し、ようやく原稿はできあがったのですが、版元の都合もあって出版が延び、2月20日の発売になりました。
歯に関する本は、企画編集したものがすでに何冊かあります。しかし、健康ものといわれるジャンルでも、歯に関する本はあまり売れません。
何故でしょう。


歯の病気が、いのちとかかわると思っていないからではないでしょうか。つまり、歯の病気には切迫感がない。虫歯になったら、削ってつめればいい。歯周病になって抜けても入れ歯がある。
歯の病気はたいしたことがない、と思っているのではないでしょうか。
じつは、そんなことはありません。調べてみると、認知症、がん、糖尿病、肥満、みな歯と関係があります。
まず、自前の歯をしっかりと守ることが大切です。


歯の役割というと、誰もが食べることを思いつきます。もちろん、食べるためには歯が丈夫である必要です。入れ歯があるじゃないかというでしょうが、入れ歯、とくに総入れ歯の人はよくわかると思いますが、なかなか口に合いません。合わない入れ歯は本当に不自由です。食べることが嫌になると聞きます。
美味しく、楽しく食べるためには、歯は欠かせません。


食べると同じぐらい重要な歯の働きは、話すことなのです。
脳梗塞などで倒れたときに、入れ歯をしていると真っ先に外されます。入れ歯でのどがつまったりすることを防ぐためです。
入れ歯を外されると、もごもごいっている感じで、何をいっているのか、よくわかりません。何度も何度も聞き返されているうちに、話すのがおっくうになり、話さなくなるといいます。
入れ歯をじっくり見たことがありますが、かなりの大きさです。あんなに大きなものが口の中に入るのです。「あ」「い」「う」という母音は、口の中で発生します。もし入れ歯が合わないと、ガタガタしていると、この発音がうまくいきません。母音の発音がうまくいかなければ、すべての発語に影響を及ぼします。
語尾の発音が明瞭でないタレントを見かけますが、おそらく入れ歯がきちっとあっていないのではないでしょうか。
聖路加病院の日野原先生は、ご自身のコラムで、「発語が明瞭なのは、義歯が少ないこと」と述べておられます。101歳の今も、診察や講演と話す機会が多いのですが、18本の自前の歯があり、入れ歯は歯根に固定されているそうです。
8020運動というのがありますが、101歳で18本の歯があるのは、歯の重要性をご存じで、きちんとコントロールしてきたからでしょう。


自分の歯を守るためには、どうすればいいのでしょう。そんなことに答えるために、『歯は磨くだけでいいのか』(文春新書)を書きました。
ぜひお読みください。