大切なのは入口と出口

わたしは、自慢ではないが、いくつも病気を持っている。中でもいちばん古いつきあいが痔である。40代のころから、痔の気があるな、と自覚していた。
当時、テレビ番組で『噂の町医者』という番組をつくった。TBS系列で放映され、けっこう視聴率もとれた。まだまだ医師がテレビにどんどん出る時代ではなく、「神の手」などという言葉は使われていなかった。医師を紹介する番組の走りである。
その番組で痔の名医を紹介した。社会保険中央病院にいた岩垂純一医師である。痔は、たいへんポピュラーな病気であるが、大学でも痔の講義はなく、怪しげな治療法が横行していた。社会保険中央病院は、早くから大腸肛門科という科をつくり、痔の専門治療を行ってきた。痔の病気に関しては、日本でいちばん研究も治療も進んでいる病院だった。全国にある肛門科を看板にしている病院やクリニックで働く医師(おもにその病院の二世たち)が、大学を卒業したあと、研鑽のためにこの病院で働いていた。
その肛門科の責任者が岩垂純一医師である。現在は開業している。
わたしの痔の状態が芳しくないこともあり、これから山登りを本格的にはじめるにあたり、診てもらった。
薬で治ると思っていたが、手術が必要とのこと、岩垂純一診療所は、自由診療のために手術となるとけっこうお金がかかる。しかし、受けるしかないだろう。
診察のあと、いろいろ話をしたが、口(歯を含む、口の機能)と肛門は、からだの入り口と出口だが、大事にしている人が少ない、気になっている人は多いのにきちんと治そうとする人が少ないことで意見が一致した。
そしてなにより、この入り口と出口の機能を損なわないようにすることが、QOLを維持するには欠かせない。人生を楽しく送るためには、入り口と出口をいい状態にしておくことだ。
岩垂医師と久しぶりに話して、このことを大いに実感した。
自著『歯は磨くだけでいいのか』を進呈した。