除菌外来へ行ってみた。これ未来の歯科だ

鶴見大学歯学部にできた、おそらく日本で初めてと思われる除菌外来を取材してきた。除菌外来は、鶴見大学探索歯学講座教授の花田信弘氏がはじめた。花田教授には関しては、『歯は磨くだけでいいのか』でくわしく紹介したので省略するが、歯科の世界でいまもっとも注目されている人である。
除菌外来は、当初、花田教授が開発した3DSという口中の虫歯菌、歯周病菌を除菌する方法を一般の人に広げるのが目的と思っていたが、虫歯菌、歯周病菌を除菌するだけではなく、歯科から健康提案できるものを志向している。
除菌外来では、まず、体重、血圧を調べる。設置されている体重計は、体重だけでなく、体脂肪、両腕や両足、さらに胴体の筋肉量、水分量などがわかり、そこから基礎代謝も算出されるようになっている。血圧も両腕だけでなく、両足の血圧を測り、血圧だけでなく、動脈硬化の進行具合がわかる。
体重計の数値から、わたしはやや肥満。筋肉量は、右足、左足は標準だが、右腕、左腕、胴体では標準以下だった。毎朝ウォーキングをしているし、たまに山登りをしているから脚力はまだあるが、上半身の筋力が低い。全体的には、筋力が少ないために、基礎代謝が悪く、少量の食事でも太ってしまうことがわかった。
筋肉量を約5kgふやし、脂肪を8.6kg減らすと、理想体重である59.2kgになるようだ。
血圧値は、右腕は131/84、左腕は128/89で、腕の血圧では左右差はほとんどなく、しかも値も基準値の範囲にある。左右の腕の血圧の差が15mmHg以上あると、死亡リスクが上昇することがわかっている。動脈硬化が進んでいて、脳血管疾患との関係もあるという。左右の差が10mmHg以下なら死亡率も脳血管疾患の関連はみられなかった。足はどうだろう。右足は152/79、左足は148/84。腕の血圧より高いのは、心臓から遠くなり、それだけ末梢血管の抵抗もあるからだ。もし、足の血圧が低い場合は、動脈硬化が進み、血管の一部に閉塞状況があるかもしれない。
血管の硬さ(動脈硬化の進行具合)は、脈波の伝播速度(脈がどのくらいの速度で伝わっていくかを調べるもので、血管が硬くなっていると速度が速く、柔らかいほど速度が遅くなる)によると推定年齢で66歳と年齢相当だった。足の血管の詰まりはなく、正常と判断された。
この検査では、現時点でのからだの状態をチェックしているのである。一般的な健康診断ではないので、血液検査などは行わない。
そして、これがポイントになるのだが、3DSを行うためにわたしの歯にあったトレーを作成する。歯型の印象を撮影し、次回の診察まで歯にはめるトレーを作成するのだ。自分の歯にあったトレーに抗菌剤、フッ素といった薬剤を塗り、それを歯にピタッとはめて、5分間。はずしてしばらくたってから口をすすぐ。
これが3DSだが、何をするのかというと、歯についている細菌を殺すため。対象となるのは虫歯菌や歯周病菌である。歯に付着しているこれらの細菌は、歯磨きをしたり、ものを食べたりしただけで、血液に入り込む。この細菌を除菌する。
血液中に入り込んだ細菌は、心筋梗塞を起こしたり、糖尿病を悪化させたりすることがわかっているが、血圧にも悪影響を与えていた。3DSをすれば、血圧が下がるという短絡なものではないが、血圧も口の中の細菌が関係している。
体重、血圧を測り、出てきた数値から、自分のからだの状態を知り、なんとかしなければと思う。そして、これらの数値をもとに健康指導が徹底して行われる。数値を見せられるので、指導にも納得がいくし、やろうという気になる。さらに口中の細菌の除菌効果を知り、健康維持、もしくは増進の重要性がよくわかる。これが除菌外来である。歯科の世界から新しい健康提案ができるようになった。未来の歯科診療のあり方を見た思いである。
3DSについて、くわしくは『歯は磨くだけでいいのか』をご覧ください。