たびたび歯の話で恐縮ですが

口腔保健シンポジウムというのが7月に開かれました。
名古屋大学大学院准教授の内藤真理子さんが発表していますが、脳卒中になる人ほど歯を失っていることがわかりました。
失った歯の数がゼロから9本と少ない人とくらべると、10本から19本の歯を失った人では、脳卒中になる割合が1・3倍、これが20本から28本、つまり歯をほとんど失ってしまった人になると、1・6倍でした。歯がなくなるにしたがって、脳卒中にかかる人がふえているのです。
脳卒中よりはるかに多かったのが肺炎です。肺炎は、心臓病を抜いて死亡原因の第3位になっています。歯をきちんと保持した人とくらべると、10本から19本歯を失ってしまった人では2・46倍、20本以上失った人では2・37倍にもなったのです。歯をしっかり守っていれば、肺炎にかかる割合がぐんと減るのです。歯が残っているのは、それだけ口の中が細菌に侵されていないという証拠です。肺炎を起こす細菌も少ないはずです。
もうひとつ恐ろしいデータを紹介しましょう。それは歯を失っている人ほど、大腿骨頸部の骨折が非常に多くなるのです。大腿骨頸部の骨折は、寝たきりの大きな原因になります。これも、60歳以上に限定して調べてみると、歯がかなりと残っている人(失った歯がゼロから14本)にくらべると、15本から27本の人は9・28倍、歯がまったくない人の10・5倍も、骨折しやすいことがわかりました。なんと10倍。
義父といっしょに暮らしていたころ、散歩に行くといって義父が出掛けました。帰り道のことです。家に帰るには幹線道路から脇道に入る必要があります。この坂が少し急になっています。たまたま仕事部屋から見ていたのですが、下りの坂道でからだを支えることができず、あれよあれよという間に頭から落ちて、顔などに怪我をしてしまいました。出掛けるときは軽々と登っていったのですが、降りるときにからだを支えきれなかったのです。
わたしたちは、倒れそうになると、歯をぐっとかみしめて踏ん張りますが、それが歯がないためにできなかったのです。義父は総入れ歯でしたが、総入れ歯では噛みしめる力が出ないのではないかと思いました。
義父は、本人も気づいていませんでしたが、背骨の圧迫骨折を起こしていました。想像するには、部屋の中で何かの拍子に尻もちをついたときに骨折したのだと思いますが、これも踏ん張る力が十分でなかったからではないでしょうか。
歯がなくなるにしたがって、踏ん張る力もなくなってくるのでしょうか。
歯を失うと大きく変わるのが、食べものです。内藤准教授も紹介していますが、歯が少なくなると、歯がなくても食べられるご飯やお菓子がふえ、野菜が非常に少なくなります。肉や魚といったたんぱく質も不足してきます。牛乳などの乳製品もとらないようだ。食べるものが限られてくると、骨折の原因となる骨粗鬆症にもなりやすくなります。
なにしろ歯は大事。
歯は磨くだけでいいのか』をぜひ。