ちょっと今年を振り返って

今年をひと文字で表すと、「輪」だそうです。オリンピックの五輪がいちばん先に浮かびますが、人の輪ということもあります。人々が輪になって集まり、ひとつのことをする。輪になってみなで知恵を出し合う、輪になって踊るというのもいいですね。そんな機会はずいぶんと少なくなりましたが。お互いに助け合いながら、ひとつのことをする。もう一度共同体を構築しようということにもつながっていくような気もします。
ところで、今年の話題となった、テレビ、映画、本などありますが、テレビは『あまちゃん』『半沢直樹』ですね。どちらも見ていましたが、わたしがいいなと思ったのは、ついこの間終了しましたが、『ダンダリン』と『刑事のまなざし』です。『ダンダリン』は、労働基準監督官が主人公ですが、労働基準監督官が主人公のドラマははじめてみました。彼らが、労働者の権利を守ろうとしているのがよくわかりました。ブラック企業とよくいいますが、労働基準監督官ががんばってくれれば、少しは道が開けるでしょう。最近はどの職場でも、派遣社員がふえ、その派遣社員を企業が直接雇うこともありますが、このときに結んだ労働契約などが経営者側に有利になるようになっていることがあるようです。この問題を扱っていましたが、もっと気軽に労働基準監督署に相談できるといいですね。
『刑事のまなざし』は、事件を解決するだけの警察ドラマでありませんでした。犯人も被害者も、ともに人間なので、そこにはさまざまな感情があり、双方を知っているのは警察官です。犯罪を犯してしまった人にもきちんと目を配り、なぜその犯罪を起こしたのかを丁寧に掘り下げ、見ごたえがありました。
映画は、映画館で見たいのですが、近くにはありません。もっぱらDVDで見ています。今年いちばんよかったのは、『最強のふたり』。これは事故で首から下の感覚がなく、動かすこともできなくなった富豪と介護人の話です。実話だそうですが、障害を持った人をまったく同等の人として介護していきます。介護人がスラム出身であり、介護の専門家でないことなどで、それこそ様々な出来事があるのですが、ふたりで楽しそうにそれらを乗り越えていく。ふたりの障害にとらわれない生き方がよかったですね。登場する車がイタリア製のマセラティクアトロポルテで、この車がじつに格好いい。日本円で1850万円。ちょっと手が出ませんが、乗ってみたいですね。
テレビ、映画ときて、本ですが、どうしても仕事関係の本が中心になりますので、まったく違った本を取り上げましょう。俳句や川柳が好きなので、徳永政二さんの句集『くりかえす』(あざみエージェント)をお勧めします。藤田めぐみさんの写真とのコラボがとてもいい。「呼んでいるようにあなたは立っている」 「まっさきに告げる走ってきたことを」などとても素敵な句が、これも素敵な写真といっしょに並んでいます。
ほかに、『笑う子規』(筑摩書房)。今年亡くなられた天野祐吉さんが選んだ正岡子規の句に南伸坊さんが絵を添えて、ちょっとくすくすと笑ってしまう句が選ばれています。これも好きな句集です。
印象に残った言葉は、友人のいった「スパイラルアップ」。これは円を描くように上昇していくということですが、1ヶ所にとどまることなく、常に動き、そして上を目指すという意味だと思います。
日々さまざまなことに出会い、そこから学びますが、常に上を目指すのは重要です。しかし、目指すいただきに到達できなくても、上を見て進むこと。

ここで、友人から注釈が入り、強い上昇志向というよりも、日々、同じことのくり返しのように見える日常も、昨日よりも今日、今日よりも明日、違った自分を探す、もしくは目指す、といった人生における能動的姿勢が必要だ。あるときはダウンするかもしれないが、一定の期間でみればそこに成長の跡が見られる・・・それがよい。そして、無意識のうちに自然にではなく、常にこうした意識を持つことが大事なのだ、と。なるほど。
スパイラルアップを心がけねば。

近著『死に至る病チェックブック』をぜひお読みください。一家に一冊、いいすぎかな。