認知症での徘徊

2012年、認知症が原因で徘徊し、行方不明となった人の数は、全国で9607人。これは警察に届け出た数です。
大半は無事に戻ることができたのですが、約180人の方が行方不明のままです。
そして、12年に解決した例(11年以前に行方不明と届けられ、解決したものを含む)は、警察が保護をした人は5524名、自力で自宅に帰り着いたり、家族によって発見されたりした人が3230名でした。所在を確認できたが、すでに亡くなっていた人が359名。亡くなった人の中に、交通事故に遭われた方もいるはずです。電車ではねられたかもしれません。
列車事故によって亡くなられた当時91歳の男性も、妻がちょっとまどろんだすきに、家を出ています。
いまわたしが住んでいるところでも、地元の警察からの行方不明情報をよく聞きます。
これは、決して他人事ではありません。
名前がわかるものをつけるなどの工夫が必要でしょう。ご本人がいやがらないものがあるといいですね。
ちなみに、届け出から発見までの期間は、届け出当日が6263名、2日から7日目までが2979人。
すぐに見つかればいいのですが、なかなか発見されないと、ご家族の心中はいかばかりか。



わたしも92歳という超高齢の義父を暮らしていました。
スケッチに行ってくるといって、なかなか帰ってこなかったときは心配しました。
ひとりで出掛けられなくなってからは、わたしがスケッチのできる場所に連れて行き、約束の時間になる前には、迎えに行くようにしていました。
自宅の近くでスケッチしていたとき、あれ、ちょっと姿が見えないなと思ってその場所に行くと、あおむけになって倒れていました。仰向けになったままバタバタしていたのです。からだを横にして、腕を使えば、起き上がることができるはずですが、腕の力だけでなく、からだ全体の筋力も落ちているので、あおむけに倒れてしまうと、起き上がることがなかなかできないのです。
街中と違って、人は歩いていないし、車もほとんど通りません。助けを呼ぶにしても、自宅の中にいたわたしたちには届きません。
わたしは、義父のことが気になり、仕事をしながらも、様子をできるだけみるようにしていたので、坂道で転んだり、あおむけになって倒れていたりした義父をすばやく発見できました。
家で原稿を書く仕事ですから、その合間に気を配ったわけですが、これが四六時中つづいていたら、きっと音をあげていたでしょう。
列車事故に遭われた高齢者の話は、本当に他人事ではないのです。


認知症には中核症状と周辺症状がありますが、どの患者にも起こる記憶障害、日時や場所がわからなくなる見当識障害、理解や判断力の障害、計画を立てて実行する実行機能の障害、歯ブラシなどの使い方がわからなくなる失行、家族の顔がわからなくなったりする失認、相手の言葉が理解できない、言葉が出てこない失語などがあります。
この中核症状は、専門医によると、薬を使うことでずいぶんとよくなるそうです。
症状が軽いうちに医師の診断を受け、薬を使って治療をはじめてほしいものです。薬には飲み薬だけでなく、貼り薬も出てきました。また、徘徊、暴言などの周辺症状に対しても3分の2はコントロールできるそうです。
認知症といわれるのは、家族もいやかもしれませんが、早くから治療を受けることが大切です。


補足ですが、前回の裁判の控訴審で、賠償額が半分の359万円に減額されたのは、JR東海の安全管理体制にも問題がありとし、駅員が乗客を注意深く監視していれば、事故は防ぐことができたとして、減額しています。
賠償額の内容は、事故により、列車の遅れに伴う振り替え輸送費や人件費などです。