高齢者の閉じこもりは死亡率を高くする

わたしが住んでいる市から、あるアンケートがきた。
老人福祉計画、介護保険事業計画の見直しを3年ごとに行っているが、この事業の基礎となるよう、市内に在住の一般高齢者および要介護認定者から無作為に選び、生活状況などを調べ、さらに市の高齢者政策に対するご意見・ご希望をお聞きしたい、というものである。このアンケートがなかなかよくできている。
このアンケートの中で、4ページにわたって質問事項が並んでいるのが、「社会参加」である。
介護を受けないですむにはどのような社会参加をしていればいいのか、というヒントがこの項目の中にいくつも含まれている。
社会参加というと、なにかたいへん大げさな印象があるが、要するに、家族を含め、いろいろな人とコミュニケーションをとっているかということだ。
コミュニケーションをとるには、電話やメール、手紙などがあるが、やはり大切なのは人との接触である。人に会いに行く、家を出て出掛けることが必要なのである。
じつは、家に閉じこもっていると、死亡率が倍になるというデータがある。
高齢者の閉じこもりは「外出頻度が週1回以下に極端に減少した状態」と定義されている。
こうした閉じこもりの原因となるのは、疾病や傷害があるために出掛けられないのか、それとも自立した生活を送っていても閉じこもりになるのか。これに関して東京都老人総合研究所の新開省二部長が、疫学調査を行っている。
研究グループが2年間にわたり調査したところ、65歳以上の在宅高齢者で約10人にひとりが閉じこもり状態にあることがわかり、心身に障害があって外出できないグループ、日常生活では自立しているのにほとんど外出しないグループがあり、それぞれのタイプはほぼ同数だった。
調査の結果、閉じこもりでない高齢者と比較すると、日常生活は送れるのに閉じこもっているお年寄りの死亡率は2倍強、障害があって外出できないグループの死亡率は4倍も高かった。そして、認知機能障害の人は3倍だった。
閉じこもり群のほうは、みな死亡率が高い。しかも、2倍、3倍という高さに驚く。
調査開始時の疾患の有無、重症などのさまざまな影響をのぞき、閉じこもりだけの影響を分析すると、閉じこもりが高齢者の心身機能の低下をもたらしたのも明らかになった。
週に1回も外に出ない。
病気によって心身機能が低下し、それが生活機能の低下に結びつくと考えられていたが、閉じこもり自体が、つまり生活の活動性の低下が心身機能を弱らせることがわかった。
積極的に外出し、さまざまな人たちと交流する、これが、介護状態にならないためにはたいへん重要なことがわかった。
外に積極に出て行く、活動的であるためには、日ごろからの足腰の鍛錬が欠かせない。