変わろうとしている医学

 アンチエイジングという医学分野があります。元気で長生きするための医学的なアプローチを研究し、提案するものです。
現代医学は、臓器別医学が発展し、からだ全体を診ることがおろそかになっている傾向があります。その点、アンチエイジングは、加齢によって起こる老いをターゲットにすることで、からだ全体を診るようになり、そして病気の予防につながる、いい視点だなと思い、注目もし、原稿作成にも携わってきました。
 からだ全体に診ることに変化はないと思われますが、アンチエイジングという言葉が表しているように、老いない、ボケないということばかりが重視されることには多少の違和感を覚えます。アメリカでは、アンチエイジングは若返るという方向にいっているそうです。
 老いは防ぐことはできない。だから、その老いを認め、人生の最終章をどのように迎えたらいいのかを考えてほしいと思い、自省を含め、『自宅で死にたい』という本を書きました。
 平均寿命が男女とも80歳を超え、女性は86歳。誰もが、長生きできるような気になっています。80歳以上の人口を調べてみると、2014年の統計をみると964万人。人口の割合でいうと7.6%です。65歳以上の人口が3296万人。単純な差し引きはできませんが、2000万人以上の方が80歳にならずに亡くなっています。当たり前のことですが、誰もが長生きできるわけではありません。
 アンチエイジングの世界でも、上手に老いる方法を提案していますが、それはなかなか広がっていかないようです。誰もが生きたいという欲求をもっているからでしょう。老いの先には死がある。上手に老いることは、上手に死ぬことでもあります。しかし、それはアンチエイジングの世界ではないのでしょう。
 死を見つめるのは、医学の世界ではないかもしれません。しかし、わたしたちと死をいま結んでいるのは医学です。
医学も変わろうとしています。わたしもそこに注目していこうと思っています。

自宅で死にたい』をよろしく。