身の覚えのない病気

腎臓の状態がよくないといわれたのは、48歳のときである。
健康雑誌を創刊し、ひと段落したとき、当時所属していた会社の役員に任命された。
役員になるに当たって、人間ドックで健康診断を受けてほしいといわれたのである。
それまで自分のからだは自分がいちばんよく知っている、からだの変調にしっかり耳を傾けていれば病気は発見できると思っていた。
人間ドックなど受けなくてもいい、といったのだが、会社の総務部から役員になる条件ですといわれ、しぶしぶ受けた。
当時の自覚症状でいえば、運動不足からくる肥満による脂肪肝、自覚症状のあった胆石や胃十二指腸潰瘍、そして痔、これらの病気をいわれると覚悟していた。
人間ドックの最後の医師による面談で告げられたのは、腎臓の萎縮だった。
「右の腎臓が萎縮して、映像でもかなり小さくなっています。おそらく機能していないでしょう」
腎臓が萎縮。これはまったく予想もしていなかった。
思えば、30代のころ、生命保険に入るために健康診断を受けた。そのときに、尿にたんぱくが出ています、といわれたが、診察した医師もたいへんお忙しいようで、たんぱくが出ていますが、疲労が原因でしょうといわれた。
もちろん、生命保険にも入ることができた。
その後、自覚症状はまったくなく、普通に生活を送ってきた。
だから、腎臓が萎縮しているといわれたときは、たいへん驚いた。
しかし、痛くもかゆくもおしっこが近くなることもない。
この自覚症状がないことは恐ろしい。
わたしが腎臓の専門医に診てもらったのは、萎縮が見つかってから2年後である。
50歳のときである。