やるしかないでしょう

これだけしっかり歯を磨くようになったのは、『歯は磨くだけでいいのか』(文春新書)の著者として、恥ずかしい「歯」をもっているわけにいかないということもありますが、何といっても歯の重要性をとことん勉強させられたからです。
そして、歯を守るには専門家の助けも必要だが、持ち主である自分自身がやらなければならないことがあるし、またできることがある。
そのことも思い知りました。
できることはやるしかないでしょう。
そんなとき、友人ががんになり、骨転移を防ぐ薬を服用しはじめました。
がんが進行の速いものではないこともあり、日ごろの節制もあって、はたまた治療のおかげか、あまり進んでいません。
これはたいへん喜ばしいことなのですが、骨転移を防ぐ薬の副作用がありました。
歯周病が悪化したために歯が抜けてしまったのですが、抜けた歯の跡がなかなか修復されず、大きく穴が開いたままなのです。
痛みもひどく、近くの歯科医で治療を依頼したのですが、口腔内のがんには知識があっても、抗がん剤の副作用に関しては知識がなく、県立のがんセンターの歯科で治療を受け、小康をえています。
抗がん剤の治療を受ける前に、歯周病の治療をきちんと受け、症状を改善しておくことを伝えてあったのですが、がんのほうが気になり、歯の治療は後回しになりました。
痛みがひどいときは、もうこのまま死んでしまうのではないかと思ったようです。
このときも相談を受け、口腔の痛みの専門家を紹介したのですが、そこまでいくこともできない状態でした。
そこで、県内のがんセンターに行って相談するように指示し、ようやく痛みもおさまってきたようですが、歯が抜けたあとはまだふさがっていません。歯を抜いてはいけなかったのですが、抜いたら楽になると思っていたことが、かえってあだになりました。
いま歯科の世界で、骨転移を防ぐ薬と同様に骨粗鬆症の薬を服用している患者さんの歯の治療が問題になってきています。
まだ、正確な情報がいきわたらず、歯の治療ができないこともあります。また、薬を服用しながら治療を続けるとあごの骨が壊死することもあるのです。こうした薬を服用していると歯科医には必ず伝えることが必要です。
こんなこともあり、わたしも歯に真剣に向き合っているのです。