もうひとつの思わぬ副作用

骨粗鬆症の薬を飲んでいて、歯科治療を受けたり、骨折の治療を受けたりすると、治りが悪くなるだけでなく、場合によっては思わぬ副作用に襲われることがある。
とくに、問題になるのが歯科で治療を受けたときだ。
そして、骨粗鬆症の薬と同じように、問題が起こるのが抗がん剤のひとつとして使われる骨転移を防ぐ薬である。
骨転移は、すべてのがんに起こるが、なかでも骨転移が起こりやすいがんがある。
乳がん、肺がん、前立腺がん、多発性骨髄腫で、これらのがんの2割から3割の患者さんで骨転移が起こる。
当然、骨転移を防ぐ薬が処方されることが多い。
友人が前立腺がんになった。がんが見つかったとき、腫瘍マーカーが2000という桁違いの数値だったこともあり、手術もできず、ホルモン療法と抗がん剤治療が中心に行われた。
骨転移も見られ、これを防ぐための抗がん剤を服用していた。
当初、抗がん剤の副作用もなく、腫瘍マーカーも下がり、がんも抑えられていた。
しかし、徐々に腫瘍マーカーの数値が上がりはじめ、次なる抗がん剤の治療を勧められた。
新たな薬を服用して、すぐに歯に問題が起きた。
すでに、歯周病がすすんでいたのか、歯がぐらぐらしてきて、抜けてしまったのである。
一本だけでなく、ほかの歯にも異常が見られた。
ぐらぐらするだけでなく、痛みも激しくなり、本人は歯を抜いてしまいたい、と思った。
歯科医に、ぐらぐらになっている歯を抜いてほしいと訴えたが、もう少し様子を見ようといわれ、ずいぶんつらい日々を過ごしていた。
知り合いの歯科大学の教授に相談したところ、痛みの専門家を紹介するといわれたが、そこまで行く元気もなかった。
比較的に近くにある地域のがんセンターに歯科があることをわかり、そこで治療を受けるようにアドバイスした。
ようようそこに行くと、歯は抜いてはいけない、骨転移の薬の服用をやめ、薬の作用がなくなってから、歯の治療をしようということになった。
現在、骨転移の薬をやめて、痛みもなくなり、小康を保っている。
抗がん剤に骨転移を防ぐ薬が含まれている場合、できれば服用の前に、歯周病や虫歯の治療をきちんとすませておくことが必要だ。
これがなかなかむずかしい。