コグニサイズ

かつてインタビューした長谷川和夫先生。
有名な俳優と同じ読みですが、もちろんまったくの別人です。
でも、ひょっとするとかの俳優よりいまは著名かもしれません。
というのも長谷川先生は、医療現場で認知症の状態を調べるためによく使われる「長谷川式認知症スケール」というチェックシートを作られた精神科の医師です。
この方法が英文で世界の学会に発表されていれば、このスケールが認知症をチェックする国際的なスタンダードになっていた可能性があります。
現在、広く使われているミニメンタルステートというチェックリストより1年も早く発表しているからです。
「長谷川式」(と略します)は、今日は何日ですか、いまいるところはどこですか、という非常に身近な質問から、記憶力などが試されるものまで9つの質問で出来ています。
そのなかで、認知症でなくでもふと考えてしまう質問があります。それが、100から7を引くというものです。
さっそくやってみましょう。
まず、100から7を引くと93をいう数字が頭に浮かびます。そこからさらに7を引いていきます。
頭に数字を浮かべ、そこからさらに引き算していきますが、このとき、「100から7を引くと93でしょう、そこからまた引くの」というように、93という答えをいってはいけません。
数字を頭に浮かべてもらい、さらに引き算をします。これがミソです。
認知症でない人でも、2回目の引き算となると、その正解率は56%だそうです。ちなみに認知症になると、2回目の正解率は25%。
注意の分割力ということが試されます。この7の引き算は、シリアルセブンテストといわれ、脳を強く活性化することがわかっています。
これを歩きながらやってみましょう。
マイナスになるまで100から7を引いていきます。引き算をしながら、頭に順々に数字を浮かべて歩くのは、集中力が必要です。
ウォーキング自体も認知症予防に効果がありますが、これは非常に脳が鍛えられます。
こうした100−7のような引き算をしたり、言葉のしりとりをしながら、ウォーキングをすることを『コグニサイズ』といいます。
コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を合わせた造語です。
国立長寿医療研究センターが開発した方法です。
シリアルセブンテストで脳を活性化し、さらにウォーキングをして、相乗効果が生まれるのです。
軽く息がはずむ程度の運動をしながら、頭に刺激を与えましょう。
認知症の予防だけでなく、回復にも役立つことがわかっています。
交通事情に気をつけながら、ぜひやってみてください。
「長谷川式」に、言葉の遅延再生を確かめる質問があります。
前もって聞いた言葉を、少し時間を置いて思い出すのですが、これもまたむずかしい。
たとえば、りんご、シマウマ、新幹線というように、それぞれ無関係のものがいわれます。
これを思い出すのですが、認知症ではない人では、植物、動物、乗り物というヒントをもらえば、それぞれの正解率は80%ぐらいになります。認知症が疑われる人ではヒントをもらっても正解率は30%。これも脳のトレーニングになります。
パートナー同士でやってみるといいでしょう。
ヒントなしですべて思い出すでしょうか。
八ヶ岳ジャーナル』1200字の連載を少し改稿しました。