俳句と短歌と川柳と

わたしは趣味といわれるものをあまり持っていない。
しかし、おもにジャズだが音楽を聴くことは欠かせない。これは趣味か。
それでも、最近、仕事をしているときに音楽を聴かなくなった。
もともと集中力がないので、仕事の時間がつづかない。
それで音楽を聴いていると、なおさら続かないことに気がついたのだ。いまさら、だが。


昨年末から年始にかけて、頼まれた原稿を書いていた。
1月23日に高知で行われる法事に行くので、お正月も自宅ではほとんどお酒を飲まずに、原稿を書き続けた。
原稿を書き終え、無事に高知で法事にも参加でき、当地で歓待され、一週間ほど滞在した。
あいにくの寒波の襲来で、地元の人たちに「すみませんね、本当はもっと暖かいのですから」といわれたくらいだったが、楽しい日々だった。
ふと振り返ってみると、この原稿を書いているとき、音楽を聴いていなかった。それほど集中したというわけだ。
音楽はリラックスするときに聴くものだと思った次第。
つまり、趣味。



もうひとつ、わたしの好きなものに、俳句と短歌と川柳がある。
俳句は正岡子規が好きで、子規の生まれた松山まで行ったくらい。
もっとも子規は松山が嫌いで早く東京に出たかったようだ。


俳句や短歌と川柳は、自分ではほとんど作らない。
人のものを読むのは好きで、朝日新聞の月曜日の「俳壇歌壇」は楽しみ。
とくに永田和宏さんの選ぶものが好きだ。
ホームレス歌人として有名な坪内政夫氏の
湯タンポで 背中と足を あたためて 底冷えのする夜を みのむしでいる
という短歌に出会い、その身を思う。


『家族の名前』というフォト句集がある。
徳永政二さんの句に藤田めぐみさんの写真が合わさったもので、とても素敵な句集だ。
徳永さんの句集には『カーブ』『大阪の泡』『くりかえす』などがあり、
いづれも藤田さんの写真とあいまって、徳永さんの世界が目の前に広がっていく。
わたしの愛読書になっている。


今回の『家族の名前』は、どこかさびしげな気配が全体に漂っている。
人が生きている限り出会う、悲しみがあふれている。


ひとの名が光るその日のその雨に
箸袋こまかく折って泣いている
まだ少し君が残っているチューブ


高知は息子のお嫁さんのお父さんの一周忌に行ったのだが、
残されたものにとっては、あの日がこないことを願っているに違いない。
そんなことを思い出している。

『家族の名前』は以下のサイトから
http://azamiagent.com/