いますぐに効果はありませんが

花粉症、真っ盛り。クシュン、ハクションばかりでなく、鼻水、鼻づまりで息苦しく、さらに涙が出たり、かゆかったりと、花粉症の人にとって、春はいちばん嫌なシーズンかもしれません。
スギの木が少なく、当然花粉も飛ばない沖縄や小笠原に、この時期だけ移住したいという人もいるようです。
1960年代、スギの植林が推奨され、全国的にスギの木がふえてきました。その後、海外からの安い材木が入ってきて、使うはずだったスギの木の伐採や間伐が行われず放置され、その結果たくさんの花粉を生み出すことになりました。
そして、都会では道路のほとんど舗装され、花粉が地面にしみ込んでしまうことがなく、舞い散ります。その花粉は、さらにホコリや排気ガスから出る排気物質などとくっついて、余計アレルギーを起こしやすくなります。
東京にいたとき、奥多摩など近くの山を山歩きしていましたが、スギの林に出会いました。スギの林が手入れがされていないので、中に入ると暗いのですぐにわかります。
これだけスギの木があれば、花粉も飛ぶだろうと想像できます。
花粉は、本来わたしたちのからだにとって異物ですから、外へ出そうとします。
免疫反応が起きて、排除するわけですが、花粉に対して免疫が過剰にできあがってしまうと、花粉にそれこそ過剰に反応し、花粉症が発症するのです。
わたしが子どものころには、花粉症やアレルギーで困っている人をあまり見かけたことがありません。生活環境がよくなり、衛生状態も格段によくなりました。その一方でアレルギーに悩む人がふえてきたような気がします。
砂場は汚いから遊ばせないという親をいるようですが、多少の泥んこ遊びが必要です。牛などを買っている牧場で育った子どもたちにアレルギーの人が少ないという話も聞いたことがあります。さまざまな環境で暮らすことが大切なのですね。
花粉症に関して、マスクなどで花粉が体の中に入り込まないようにしたり、シーズンの前から抗アレルギー薬を服用し、症状がひどいときは抗ヒスタミン剤を使うのが、一般的です。
花粉を家の中に入れないこと。外出したら、コートなどを外でよく払う、洗濯物は外に干さない。
朝掃除をするときも、掃除機をすぐに使わないで、まず拭き掃除をすること。花粉を飛ばさないようにするためです。花粉が床に落ちている可能性があります。そこに掃除機をかけると、花粉が舞いあがります。それを吸い込むことになります。
根本から治すには、アレルギーを引き起こす元となるアレルゲンを少しずつ体に入れ、慣れさせる方法があります。減感作療法といわれています。この方法は、注射でアレルゲンを入れます。注射をしてもらうために、2年間医院に通わなければならないし、注射ですから痛いので、患者にはたいへんでした。
昨年、舌の下にアレルゲンを数滴落とし、下の裏側にある粘膜からアレルゲンを吸収させる方法が保険でも認められました。舌下免疫(減感作)療法といわれています。
舌の裏側を見ると、血管が走っているのを見ることができます。皮膚の下を走っている血管より太いことがわかります。ちなみにふつう目で見ることができるのはすべて静脈です。舌下に置いた薬が、静脈から入るわけではありません。舌の裏側の粘膜など薬をしみ込ませますが、この方法で著名なのはニトロ製剤といわれるニトログリセリン錠などがあります。この薬を使うと、心臓の筋肉に酸素を送り込んでいる冠状動脈が広がり、心臓の血流をよくなるのです。
花粉症の舌下免疫療法は、アレルゲンが首筋にあるリンパ節に届きます。花粉症が鼻や目といった顔に症状が出るので、首筋にあるリンパ節に働いて、アレルゲンに慣れ、過剰な働きをしないようになるではないかといわれています。
ふつうの減感作療法も治療が終了にするのに2年間かかりますが、舌下減感作療法も少なくとも2年、場合によっては3年ぐらいかかるようです。毎日薬を舌の下に入れるのはたいへんですが、花粉症で毎年悩まされている人にはやってみる価値があるでしょう。
ただし、スギの花粉にしか効果がありませんので、アレルギーのチェックをしてもらう必要があります。いまからすぐに役に立つというわけではありませんが、耳鼻科で相談してみることをお勧めします。
なお、花粉症のシーズンには治療をはじめることはできません。シーズン終了後、相談してみましょう。
八ヶ岳ジャーナル3月1日号の記事を改編。