自分の身は自分で守るために

「薬は足りていますか」と聞かれたのは、2年前の大雪のとき。
知り合いの医師からフェイスブックを通して、連絡がありました。


いつも診てもらっている主治医は、近くにいないので、こちらの状況はわかりません。
知り合いの医師は、同じ地域にいますから、大雪で閉じ込められたわたしを心配してくれたのです。


あのとき、1週間は車を動かすことができず、自宅に軟禁状態になりました。
持病があって薬は欠かせないのですから、もし1週間も薬を飲まなかったら、どうなっていただろうと思います。
じつは、1ヵ月前に定期検診に行き、薬はまだ十分にありましたので、「足りています。ありがとうございます」と返事をしました。
こんなことを思い出したのは、熊本地震があったからです。


被災された方たちは、「地震だ」と、あわてて机やテーブルの下に逃げ込んだと思います。
揺れが少しおさまってから、外に逃げたのでしょう。


非常の持ち出し品に、ぜひ加えてもらいのが、薬です。
とくに持病があって、薬の服用が欠かせない人は必需です。
少なくとも1週間分は持って出ましょう。
1週間もたてば、薬も手に入るようになるはずです。
非常時の持ち出し品に1週間分の薬を小分けして入れておくといいでしょう。


それに、もうひとつ持って出てもらいたいものに、お薬手帳があります。
お薬手帳には、どんな薬が処方されているかが記録されています。
被災して、以前かかっていた主治医の診察を受けることができればいいのですが、そうはいきません。
救援で駆けつけてくれた医師の診察を仰ぐことになります。
そのときに、お薬手帳を見せれば、自分の病状をある程度知ってもらう有力な手掛かりになります。


災害が起きたときは、多くの患者が急ごしらえの診療所に殺到するでしょう。
医師も忙しく働いています。
こうしたときに、自分の病状を正確に話すことができればいいのですが、なかなかむずかしいかもしれません。
そんなときに、お薬手帳を見せればいいのです。
どんな薬が処方されているかがわかるだけでも、医師にとっては診断の手助けになるはずです。


お薬手帳を持って出なかった、服用している薬も持ってこなかったという場合に、役立つのが写真です。
いま服用している薬の写真を携帯でとっておきましょう。
お年寄りでも携帯電話を持っている人がほとんどでしょう。そして、地震のときでも、必ず持ち出すのは携帯電話です。
携帯電話に服用している薬がはっきりとわかるように撮影しておき、
それを専門家に見せればいいのです。
薬剤師の方に見てもらえば、薬の種類がすぐにわかるはず。お薬手帳と同じ働きをしてくれます。


地震のときに考えるのは、まず身を守ること、そして次に生きのびること。
自助といって、自分で自分の身を守るためにすべきことがあります。
まず、自助があり、共助(ともに助け合う、ご近所や知り合いからの手助け)、
公助(行政のからの助け)につながっていきます。
自分のからだは自分で守る。
熊本地震は、わたしたちにたくさんのことを思い起こさせてくれました。

決して他人事ではないのです。明日の自分を迎えるために。(八ヶ岳ジャーナル5月1日号一部改編)