心臓は左胸にはない

人体アトラスをつくろうとしたことがあります。
アトラスとは地図帳のことです。
人体アトラスは、からだの中の臓器を地図のように表すことで、
各臓器の位置関係を示し、それぞれの働きを解説しようというものです。


いまから20年以上前、新しい健康雑誌の創刊を依頼され、その雑誌の目玉の企画にしようと思っていました。
もちろん、それまでも、からだの解剖図解はありました。
しかし、そのほとんどが医学生対象のもので、一般向けのものはあまりありませんでした。
しかも、それらのほとんどは図解、つまりイラストです。
モノクロで、精密ですが、リアリティにかけます。
素人にはそうしたイラストでは、少しわかりにくいし、とっつきにくい。
医学生は、人体解剖の講義がありますから、実際のからだを見て、臓器の位置や色などを知ることができます。


その後、東京の医学の専門書店で、実際のからだ、亡くなった人のそのご遺体を利用して、
臓器がどこにあるのか、説明しているビデオを見たことがあります。
ナイフを刺して、からだのどの部分まで届いているかを説明していました。
すごいビデオだなと思いました。
医学生、専門家向けのものです。当時はまだそんなものもありません。


一般の人は、からだを外側からは見ることはできますが、からだの中側はわかりません。
人体アトラスを図解ではなく、実際のからだを使ってやろうと思いました。
解剖を見せるものではありません。
実際のからだ、ヌードに臓器を精密なカラーイラストで載せていったのです。
いまならコンピュータグラフィックで簡単にできますが、当時はまだそれほど発達していませんでしたし、
恐ろしく値段がかかりました。
医学生向けに臓器のイラストを描いていた人を見つけて依頼しました。
監修は解剖学を担当している先生にお願いしました。


わたしも一度解剖に立ち会ったことがありますが、ホルマリンのにおいが鼻について、
なかなかとれずに困りましたが、解剖それ自体は見ていただけですが、けっこう興味深かったですね。
それぞれの臓器がどのようなところにあり、その関連もわかります。


人体アトラスでいちばん最初にとりあげたのが心臓です。
いまでも、よく覚えているのですが、心臓の位置ですが、よく左の胸にあると思っている人が多いですね。
胸の中央にあります。心臓の位置を間違えて覚えていて、胃が痛いと思っていたら心臓だったということもあるようです。
昔の小学校には人体模型がありましたが、いまはどうでしょう。
心臓、胃、肺、などはおおよそ位置がわかっていると思いますが、腎臓となるとどうでしょう。
背中側の腰より少し上、左右にあります。

からだの構造を知るといいことがたくさんあります。