一日5000個

1日に5000個、生まれてくるものとは何でしょう。
工業生産が進んだ現代社会にあって、5000個はそれほど大きな数ではありません。
生活を豊かにしてくれるものならいいのですが、残念ながら違います。
わたしたちのからだの中で生まれてくるものです。


それはがん細胞。


1日に5000個も、という数字に驚くでしょう。
がん細胞は、細胞が分裂する際に、分裂前の細胞のDNAをうまくコピーできなくなった結果生まれてくる問題児です。
わたしたちのからだの中の細胞の数は60兆(37兆という説もあるが)。毎日この1%が減っていきます。
それを補うために細胞分裂をくり返しています。1%ですから、その数は6000億個。
その中で5000個がうまくコピーされずにがん細胞になります。
ただし、これらの細胞のすべてがすべてがんになるわけではありません。ほとんどは免疫細胞によって殺されたり、
自然消滅したりするようにプログラミングされています。
生き残ったがん細胞も、10年から20年かけてがんになります。
がん細胞ががんになるには、それだけ時間がかかるのですね。


ところで、がん細胞が生まれても、免疫細胞がそれを見つけ、退治してくれます。
しかし、それも万全ではありません。見逃してしまうこともあり、がんに育っていくのです。
がんになるのに時間がかかると述べましたが、わたしたちが長生きしないとがん細胞もがんになることができません。
長寿ががんをつくりだしているともいえるのです。日本は世界一の長寿国ですが、一方でがん大国にもなりました。
大腸がん、子宮頸がん、乳がんなど、働き世代がなるがんもありますので、老化だけで原因とはいえませんが。
長寿ががんを生み出す背景になっているのですが、じつは長生きすると免疫細胞の働きも衰えていきます。
それだけがんもふえやすくなるといえます。


ここで、がん細胞を自然消滅させるもうひとつの方法に注目が集まっています。
そもそも細胞が死ぬには大きくふたつ(3つあるがわかりやすく)のシステムがあります。
ひとつは傷ついて死ぬ、ネクローシスといいます。傷ついた結果、死ぬのですからわかりやすいですね。
もうひとつがアポトーシスといわれるもの。
前もってなくなるようにプログラミングされている死、つまり仕組まれている死です。
枯れ葉が木々の枝から落ちていくような死とでもいいましょうか。


このかぎを握っているのがミトコンドリア
ミトコンドリアは、わたしたちの細胞一つひとつにあって、
からだを動かすエネルギーをつくりだしています。
ミトコンドリアも新鮮なものほど働きも強く、アポトーシスもしっかり行われるようです。
ミトコンドリアも細胞と同じように分裂してふえていきます。
ミトコンドリアを分裂させるには、運動が欠かせません。
ミトコンドリアはエネルギーをつくりだしているのですが、
からだをよく動かしていればそれだけエネルギーも使います。
からだをしっかり動かしていると、ミトコンドリアはエネルギー不足にならないように、分裂して仲間をふやしていくのです。
がん細胞をはびこらせないためにも、からだを動かしましょう。
できれば、少し負荷のかかる運動がいいようです。だらだら歩くのはなく、早歩きをふだんから心がけましょう。
人から「歩くのが速いですね」といわれるようになれば、早歩きが身についた証拠ですね。
八ヶ岳ジャーナル6月1日号より改編)