平均寿命が教えてくれること

寿命が尽きるまで元気でいたい、と誰もが願っている。寝たきりにはなりたくない、認知症にはなりたくないと。
以前100歳までボケないというタイトルの本のライターをしたが、知りあいの医師にその本を紹介したところ、内容は別にして、「100歳までは生きたくはないな」といわれた。病い、老い、そして死を身近にしている医師にとって、100歳まで生きることが必ずしも幸せと感じていないからだろう。


「あなたは、何歳まで生きたいと思いますか」というアンケートの結果を見ると、いちばん多い回答は80歳代前半で、約3割の人がそう答えた。70代後半から80代後半と答える人が全体の3分の2。日本人の平均寿命をまっとうしたいと思っているのだろうか。


ちなみに、日本人の平均寿命は、男性80・50歳、女性86・63歳で、女性は3年連続世界一、男性は3位(2014の統計調査から)。
平均寿命は、統計をとった年に生まれた赤ちゃんがどのくらい生きられるかというもので、2014年生まれの女の子の半数近くが90歳を迎えることができるようだ。
100歳が、遠い数字ではなくなってきている。
その年まで生きたいかは別にして、だが。


一方、平均寿命が短い国もたくさんある(2011年国連統計より)。いちばん短い国は中央アフリカ共和国で、男性44・47歳、女性47・31歳、二番目もアフリカでレソト。男性が46・46歳、女性が45・18歳、3番目に短いのはシエラレオネで、男性45・65歳、女性46・88歳。
中央アフリカ共和国は政情が不安定な国で、産業もあまりなく、人口の9割が1日2ドル以下で暮らしている。最貧国だ。
レソトは、かつてそれほど平均寿命も短くなかっただが、国民の4分の一がHIVエイズウイルス感染者)で、亡くなる人が急激にふえ、220万人あった人口が180万人に激減した。35歳から60歳までの成人人口の死亡率が最も高い国になってしまった。
シエラレオネも貧しい国で、医療体制はないといってもいい。エボラ出血で亡くなる人がたくさんいた国で知っている人もいるだろう。


ちなみに、世界の平均寿命は男性65・71歳、女性は70・14歳。


日本もかつては平均寿命が40代のころがあった。大正時代1921年から1925年の間、男性の平均寿命は42・06歳、女性は43・20歳。その後徐々に延びていき、戦後1947年に、男性が50・06歳、女性が53・96歳。戦争中は統計も取りようもなく、正確な数字が出ていない。戦後もすぐには国勢調査が行われていない。戦死者、行方不明者が数多くいたと思われる。
平均寿命が伸長するには、医療だけでなく、経済、戦争、政情の安定などが関係していることを忘れていけない。