小顔を自ら作り出す

わたしたちの体を動かしているのは筋肉です。
歩く、走るといった動作はもちろん、心臓を動かしたり、息を吸ったり吐いたりできるのも筋肉のおかげ。


この筋肉ですが、使わなければどんどん衰えて委縮していきます。
筋肉量でいうと、20代をピークに30代から歳をとるごとに衰えていき、80代になると20代の半分になってしまいます。
しっかりふだんから体を動かしている人は別ですが。


筋肉量が半分になってしまうと思うように動くことができません。
たとえば、少し長めの横断歩道を青信号で歩きはじめ、渡り終えないようではだいぶ筋肉が衰えている証拠。
ふだんからウォーキングなどの運動を勧めるのは、筋肉量を減らさないようにするためです。ウォーキングを続けていると、心臓や肺の機能も高まります。
ウォーキングなどの運動を日課にしていないと、筋肉不足から「寝たきり」と恐ろしい結果は待っていますよ。
脳梗塞などの原因ではない「寝たきり」が、筋肉不足で起きるといわれています。


さて、筋肉というと足や腕の筋肉を思い浮かべますが、直接目にふれないところにも筋肉はあります。
そして、心臓や肺を動かしている筋肉は、足や腕の筋肉と違って、自分の意思で動かすことができません。
自分の意思で動かすことのできない筋肉のことを不随意筋(ふずいいきん)といいます。内臓を動かしているのは、不随意筋です。自らの意思で動かせる筋肉は随意筋(ずいいきん)。


この随意筋と不随意筋が見事に連携しているのが、口です。
口の中にある歯や舌を自在に動かしている食べものを細かくしていきます。
細かくなった食べものを少し丸めてゴクンと飲みこみます。
ここまでは、意思の通りに動いてくれます。それからは、先は意思で動かすことができない筋肉の出番となります。


年齢とともに筋肉が衰えていきますが、口の筋肉を例外ではありません。
問題となるのは誤嚥(ごえん)です。高齢者に多く、食べものや唾液が気管に入り、肺炎などを起こすことがあります。
誤嚥性肺炎といいます。食事をしているときに誤嚥すると、咳などを出していわゆる咳払いをするわけです。
咳払いができる間はいいのですが、嚥下力(筋力)が衰えてくると、それがだんだんできなくなってきます。
咳払いは、気道に食べものが入らないようにトレーニングになります。食事中にちょっとやってみましょう。


咳払いと同様に嚥下力を保持する効果があるのが、「ぱ・た・か・ら」か「あ・い・う・べえ」。
それぞれ少し大きく口を開けていってみましょう。
「ぱ・た・か・ら」といってみると、頬、あご、そしてのどの奥の筋肉が動かすことができます。
「あ・い・う・べえ」は「う」で唇をすぼめ、「べえ」は舌をできるだけ前に突き出していいますので、これらの筋肉がたいへん刺激されます。
食べたり、話したりと口やのどを動かしますが、これほど大きく動かすことはありません。それだけこれらの筋肉が刺激されます。


人前でやることはお勧めできませんが、ちょっと思いついたらやってみてください。
嚥下力が増すことは間違いありません。
亡くなるまでしっかり口から食べる、これが理想です。それをまっとうするにはこれらの筋肉を鍛えておくことです。


そして、くり返してやっていると、あごのたるみが引き締まってきて、「小顔」にもなるようです。わたしも少し顔が小さくなってきました。
ぜひやってみてください。(八ヶ岳ジャーナル8月1日号に掲載したものを一部改編しています)