ゆるい関係から

健康にいい習慣を続けるために必要なことはほかにもあります。
そのひとつは、ゆるい人間関係。
わたしもウォーキングを日課にしています。
ほとんどカミさんといっしょに歩きます。歩きながら、子どもたちのこと、知り合いになった人たちのこと、読んでいる本のこと、政治のことなどを話しています。
カミさんとの関係をゆるいといったら怒られそうですが、そろそろ結婚して45年も経ちますから、いいでしょう。


脳科学者の茂木健一郎さんは、
「何も考えないで歩くと、脳の整理をしてくれます。自分自身と対話し、自らを振り返ることでストレスが軽減できます」
と述べています。
ひとりで部屋の中で考えているより、ウォーキングをしたり、人と話したりすることで、問題が整理され、腑に落ちることがよくあります。
そこで、わたしは少し行き詰ると、カミさんを誘って歩くことにしています。
毎週、地元のFM局で45分ほど話しているのですが、次の放送で話そうと思っていることを少しカミさんに話しているうちに、自分がいいたいことはこれなのだと実感することが多々あります。
原稿を書いているときも、落としどころがなかなか見つからなかったところ、歩きながら話しているうちに、これだと思うことがよくあります。
自分の仕事部屋で考えているより、いい考えが浮かぶことも多く、ウォーキングと同様に、カミさんと歩きながら話すことは、わたしには欠かせません。


じつはいい習慣を続けるには、ゆるい人間関係が必要といわれています。
確かに、ウォーキングにしてもいっしょに歩く相手がいるといいと思います。
ただ相手の都合振りまわされていては習慣になりません。
基本的には、自分で決めて続けることでしょう。
わたしも歩きたいときは、ひとりでも歩きます。
ひとりで歩くときは、音楽を聴きながら。
一つの曲で早歩きをし、新たな曲にうつったらゆっくり歩けば、早歩きとゆっくり歩きが自然と交互にできます。
歩くのは田圃道がほとんどですので、車はほとんど通りません。



茂木さんと石川さんの対談で、重要なポイントがあります。
からだに悪影響を与えるのが「孤独だ」というのです。
公衆衛生学者の石川さんは、
「健康に悪いものの王者は『喫煙』だったのですが、『孤独』も喫煙と同じぐらい悪いもの」
といっています。
友だちも少ない、結婚していないという人は早死にしやすい、そうです。


内閣府が5年ごとに実施している「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」の2015年の報告を見ると、
いま日本の高齢者の4人にひとりは、「友人がいない」
と答えています。
この調査は、60歳以上のひとに、
「家族以外に相談あるいは世話をしあう親しい友人がいるか」
という問いに対し、25.9%の人が「いずれもいない」と答えているのです。
これは大変重要なことを示唆しています。
わたしも含め、「これから」を考える上で欠かせません。


家族といずれは別れなくてはなりません。
母が亡くなったときの、父の落胆ぶりは忘れられません。
葬儀が終わり、実家にひとり残る父が思わずいった、
「わたしをひとりに置いていくのか」という言葉は、わたしの心に残っています。
兄弟が父の近くにいたので、まだよかったと思いますが、長年の連れ合いを亡くした空虚感は埋められないでしょう。


孤独にどのように立ち向かっていく。
これが大きな課題ですね。