認知症は自宅で治療したいと専門医はいう

先日、精神科医と話す機会がありました。
彼は、いま病院勤務ですが、病院で認知症の患者さんを診ていると、徘徊をするとか暴言を吐くといった認知症の症状をコントロールする、という点ではいいですが、患者さんの持っている不安を解消することはなかなかむずかしいといいます。もちろん、薬を使えばある程度できますが。


気持ちが昂ったりしたときは、適切な処置ができるのですが、もともと持っている不安は病院では解消しにくいというのです。


認知症患者さんの不安の中に、これから自分がどうなっていくのだろうというものがあります。
物忘れが激しくなり、ついさっきあったことを忘れてしまいます。
そして、それを指摘されると、不安はますます強くなります。
こうした不安は、薬を使って解消するのは、問題を先送りしているようなものらしいのです。
不安を解消するには、生活の中で行うのがいいといいます。


病院では、そもそも生活がありません。
入院は、ある意味生活と切りはなすことが目的のひとつです。
日常生活を管理して、病気の回復に努めるのです。
しかし、認知症の場合、生活を送りながら、解決の道を探すことが重要です。
生活を助けながら、治療を行うことが肝心なのです。


生活を送ること自体、認知症がないときとくらべれば、うまくいかないことが多いでしょう。
でも、できることもかなりあるはずです。
生活の中でできることをしてもらうこと、これが不安の解消につながっていくようです。


認知症だから、すべて介護をする人にやってもらうというのは、よくありません。

できることはやる、これが必要なのです。
何もかもしてもらうという状態に、人は慣れていません。適していないといってもいいでしょう。
食事の支度をする、掃除をする、といった家事、ウォーキングなどの運動など、できることはやりましょう。


少し大げさにいえば、生活そこに、自分があるからです。
認知症だからといって、すべて失われているわけではありません。


また、認知症がどのくらい進んでいるのか、それを知るには、その人の生活を観察することが大切といいます。
食事はきちんととれているのか、掃除はどのくらい間隔で行っているかなどから、症状を探っていくといいます。
それには、患者さんの生活を見ること。
どうしても家族は、患者さんを置いておけないと判断して、入院をさせようとしますが、ある程度生活ができていれば、自宅で診たほうがいいといいます。


認知症はできるだけ自宅で診てもらうようにしたいものです。