風邪を引いた人とポーカーをすると

真冬となってきました。
季節とからだの関係を調べてみました。
夏というと熱中症が話題になります。冬は、なんといっても風邪。インフルエンザ、ノロウイルスも冬に流行します。


かつて、風邪博士といわれた久留米大学名誉教授の加地正郎先生に取材したことがあります。


たいへん印象的だったのは、風邪の原因は寒さではないという話でした。


北極圏近くにスピッツベルゲンという島があります。北極圏ですから真冬の間はそれこそ海が凍ってしまい、船が島に入ることができません。
それだけものすごく寒いのに、風邪がはやることはないのです。
ところが、少し暖かくなって、海の氷が解け、船が入ってくるようになると、風邪が島でも流行するのだそうです。
船に乗ってやってきた人から、風邪が感染するのです。
寒さが直接風邪の原因とはならないといわれ、驚きました。
もうひとつ。
イギリスの風邪研究所で、被験者を隔離し、寒い時期に、お風呂上りに濡れたままの状態で、さらに濡れた靴下を履かせ、ずーっと廊下に立たせておきました。
ところが、それでも風邪をひきませんでした。


子どものころ、お風呂から上がって裸でうろうろしていると、親から、早く服を着ないと風邪を引くよといわれてきました。
寒さが風邪の原因と思っていました。違うんですね。
よく考えれば、寒くてぞくぞくするのと、風邪をひいて熱が出たときのゾクゾクが同じように思われ、これが風邪だと思っていたようです。


風邪の原因はウイルスです。
冬は、部屋を密閉しますし、さらに暖房で乾燥します。
ウイルスはわたしたちの体の中に存在します。
それがくしゃみやセキをしたときに出てきます。そのときウイルスのほとんどは水分といっしょに出てくるので、飛沫といいます。
部屋が湿気を含んていると、水分が水分を呼び込んでウイルスも床に早々に落ちていきます。部屋が密閉されていなければ、外に出ていく可能性もあります。
ところが部屋が密閉され、さらに乾燥していると、ウイルスについていた水分もすぐになくなり、ウイルスが空中をふらふらと飛ぶことになります。
これが、わたしたちの口や鼻に入ってくるのです。ここで感染がおこるわけです。


別の感染症の専門家に聞きましたが、水分といっしょにウイルスもが飛びますので、水分の重さがあるために、その距離は1メートルから2メートル。セキやくしゃみをした人がマスクをしていれば、ウイルスも飛び散りません。
マスクの注意書きをよく見ると、飛沫ウイルスを防ぐとあります。水分を含んでいるので重量があるのでブロックすることができるのです。
ただし、浮遊しはじめたウイルスを、普通のマスクで防ぐことはできません。
最近、病院やクリニックで、セキが出る人はマスクをしてくださいとありますが、これには意味があるんですね。


電車やバスなどの公共機関、病院など、密閉されているところで、マスクをしないでセキやくしゃみをした場合、飛沫の状態ならウイルスが入ってくるのを、マスクで防ぐことができるでしょう。
しかし、浮遊しはじめたウイルスは、ものすごく小さいので侵入を防ぐのはたいへんむずかしくなります。


風邪のウイルスは、湿気に弱く、室温が20℃、湿度が50%以上あれば早く死ぬと加地先生はいいます。
湿度が重要なんですね。


多くの人は鼻風邪から症状がひどくなるような気がします。
風邪の症状をおさらいしておきますと、鼻水が出る、鼻が詰まる、くしゃみが出る、のどが痛い、セキが出るに加えて、熱が出る、頭痛がする、からだがだるくなるなどです。


わたしが思うに、鼻風邪をひいて鼻水が出ます。当然ティシュで鼻をかみます。このとき、手の指にウイルスが付きます。このとき口に入り込んでくることもあるでしょう。
口から入ったウイルスがのどの粘膜に張り付くとからだの中にに入り込んでしまいます。今度はのどが痛くなります。
こういう経過をたどるのではないか、と。


これをもう少し説明をすると、ウイルスと皮膚の表面にあるレセプターが結合して、ウイルスは体内に侵入します。この時間は数分から20分。
これからどんどんウイルスがふえていきますが、1個のウイルスが8時間後に100個、16時間で1万個、24時間後には100万個にまでふえていくのだそうです。
インフルエンザの薬は、ウイルスの増殖を抑えるもので、殺すことはできません。


風邪のウイルスは手について、それが感染していきます。
加地先生によると、イギリスでの実験ですが、ポーカーをしているときに、風邪を引いた人をひとり入れると、全員に風邪が移ったそうです。まさに手から、ですね。
手をよく洗うことがまず、風邪からの感染を防ぐことになります。