イーラスを知っていますか

手術後、3週間たち、抜糸をした。
いままでおなかを切るような手術を受けたことがなく、抜糸も初めて。傷口を縫っていた糸を細かく切って、外すだけだが、傷口が引っ張られ、少し痛い。
傷口は3ヶ所あり、縦に入った傷口がいちばん大きい。大きい割に痛みはそれほど感じなかったが、抜糸で同じようにあまり痛くない。
ほかに2センチぐらいの傷口が2ヶ所あり、そのうちの上のほうの傷口は少し痛むような、つれるような感じがしていた。この傷口のすぐ下をカテーテルが通っているために、傷口も盛り上がり、引っ張られているからだ。それは外からみてもさわってもわかる。この傷口の抜糸がたいへんだった。
主治医が抜糸をしてくれたのだが、「この部分はしっかり抜糸しないとよくない」といいながら、何度も何度もトライをしてようやく抜糸ができた。
傷口を縫ってある糸が強く締まっていたためらしい。このときは少々痛かった。
しかし、改めてそれぞれの傷口を見ると、そこそこの大きさで、痛かったなという実感がわいてくる。
ともあれ、からだを切るのは痛いものだ。


手術といって腹膜透析を受けるために体内にカテーテルを埋め込むだけなのだが、やはりダメージは大きかった。
ちなみにこの手術をSMAPという。あのグループと同じ。


わずか4泊5日の入院だったが、体力がだいぶ落ちた。
術後17日目に、取材のために上京した。
一件は埼玉県浦和、もう一件は東京都荒川区でそれぞれ始めていくところだったが、最寄りの駅から普段はあまり使わないタクシーを利用、それでもすぐに疲れる。
東京に住む子どもの家に泊まったのだが、取材後帰宅中の満員電車に出くわし、押されて痛みもありし、たいへんだった。体力の衰えをつくづく感じた。
じつは術後13日目に、以前からよく登っていた近くの低山にウォーキングで行ったのだが、登りが苦しく、途中で断念している。その前日には、図書館まで8000歩のウォーキングをしたが、これはほとんど平地だったので、問題はなかったのだが、低い山といえ登るだけの体力はまだまだ戻っていなかったのだ。


現在、術後ほぼ4週間たち、体力はほぼ元に戻った。
入院中の体力の衰えがよく問題になるが、とくに高齢者の場合は注意が必要だろう。


体力の衰えは、食事の量もあるが、動かないことに尽きる。
わたしの場合、手術直後はもちろん、翌日もベッドからはなれられなかった。翌々日にはベッドからはなれ、デールームで昼食をとったが、恐る恐るという感じで、食事もかみさんに持ってもらい、たどり着いた。
翌々日もお昼はデールームでとった。
しかし、動いたのはデールームに行ったのとシャワーを浴びるために浴室に行っただけで、ほとんどベッドの上で過ごしていた。


この4週間で、わずか5日間でも「からだを動かさない」ということはどういう状態を招くかを実感した。
1991年からヨーロッパで提唱されている、手術後の回復力を強化するプログラムがある。ERAS(イーラス)という。
たとえば、大腸の手術の場合、手術当日には2時間余り座り、翌日には6時間座る。痛みがひどいときは鎮痛剤などを利用しながら座るのだという。
ベッドに横になっているのではなく、まず座る。これだけでも回復が早くなるのだそうだ。
わたしも寝てばかりいないで、ベッドわきのテーブルに向かい、本でも読んでいればよかったのかもしれない。ベッドの背もたれに持たれ、本を読んでいたが、きちんと座ったほうがいいのだろう。
「寝たまま」という状態をできるだけ避けるようにしなければならない。


SMAPは覚えなくてもいいがERASはしっかり頭に入れておきたい。