認知症になるか防げるか

病気によって、まったく前触れもなく、襲ってくるものもある。
しかし、多くの病気には前駆症状といわれる前触れがある。
その前駆症状こそ、病気になってしまうか防げるかの瀬戸際なのである。
気づいて、何らかの手を打てば、病気にならずにすむし、気づかなければ病気はどんどん進行してしまう。
そして、すべての病気とはいえないが、前駆症状のあるものが多い。
前駆症状に気づくことが大切だ。


認知症にも、前触れのようなものがあり、それは軽度認知症といわれている。
専門的にいうとMCI。
この時点で適切な処置をすれば、46%の人が元に戻るという。
国立長寿医療研究センターが、2011年から4年間の追跡調査をした結果である。
検査対象は、長寿センターのある愛知県大府市内に住む65歳以上の高齢者。
認知症になっていないと診断された4200人。
そのうちすでに18%の約740人が軽度認知症だった。
この人たちを4年間にわたり追跡調査したところ、46%の約340人が元に戻り、正常になった。残りのうち14%にあたる約100人は認知症に進み、40%の300人は軽度認知症の状態が続いた。
この研究では、認知症に進んでしまった人の数はそれほどでもないが、軽度認知症といわれた人で1年後に認知症になった人は12%、4年後には48%の人が認知症になったという研究報告もあると専門家はいう。
軽度認知症なら、46%の人が正常に戻れるということが、重要だ。


軽度認知症とは、認知症が疑われるが、はっきりと認知症とはいえない状態、健常者と認知症患者の中間にあたるもの。
「記憶」「決定」「理由づけ」「実行」などのうち、どれかひとつに問題はあるが、日常生活には支障がなく、手助けさえあれば日常生活は送れる。
しかし、放っておいてはよくない。


軽度認知症の判断は、専門的な診断が必要だが、以前にも紹介した長谷川式知能評価スケールなどを利用してみてもいいだろう。


ここで、認知症患者とその家族の会が、会員の経験からまとめた兆候と思われるものを紹介する。
・もの忘れがひどい(電話でいままで話していたのに、切ったとたんに相手の名前を忘れる。同じことを何度もいう。置いた場所を忘れてしまい、いつも探しものをしている)
・判断力や理解力が衰えている(新しいことが覚えられない。話のつじつまが合わないことが多い。料理をしなくなった)
・時間や場所がわからない(約束を忘れる、慣れた道でも迷うことがある)
・性格が変わる(怒りっぽくなった、頑固になった)
・不安感が強い(ひとりでいられない、外出時に持ちものを何度も確かめる)
・意欲がなくなる(身だしなみに気を付けない、好きなテレビ番組に興味がなくなる)
以上のようなことが頻繁に起こるようなら、専門医の診断を受けてみよう。


軽度認知症とわかって、心配しなくていい。
重要なのは軽度認知症なら元に戻れるということだ。
軽度認知症といわれなくても、物忘れがあり、記憶力が衰えてきたと感じるようなら、いまからでも予防をしておこう。


わたしももの忘れは多くなっている。
毎週45分間のラジオの放送があるので、そのために資料を読み込んでレジメを作り、また連載しているサイトもあり、結構頭は使っていると思っていた。
そんなわたしでも、人の名前が出てこなかったり、置忘れをすることも多くなったり、記憶力は衰えてきている。


軽度認知症から復活するには、有酸素運動と知的好奇心が重要と専門家はいう。
わたしもできるだけ未知のことに挑戦してみようと。ちなみに運動はしている。
この歳になると、なかなか新しいことに出くわさない。苦手なことは避けて通るし、未知のものにあまり挑戦しない。


そこで、苦手な体操をしてみることにした。
からだを「九の字」に曲げる、Sの字に曲げる、といった簡単なもの。
まず、できるころから。
さて、効果のほどは。