わたしが勧める健康法

「家内安全」
「商売繁盛」
「無病息災」
お願いごとのベストスリー。
これだけの願いが叶えられれば、もう十分ですね。
ところで、わたしの場合、家内安全と商売繁盛は願いますが、無病息災は願いません。すでに病気を抱えているので、無病息災はかないませんから。
 はじめていった人間ドックで、片方の腎臓が萎縮していて機能していないと医師からいわれました。50歳のとき。
それまで自分の体は自分がいちばんよく知っているから、具合が悪いと感じたときに医師に診てもらえばいいと思っていました。
20代から健康雑誌の編集をしていたので、一般の人より多少医療知識はあるし、人間ドックに行かなくても自分の体に関してもわかっているつもりでした。おそらく十二指腸潰瘍、胆石、痔、脂肪肝といった病気が指摘されるだろうと。
腎臓が萎縮しているとはまったく想像もしていませんでした。
 肝臓は沈黙臓器といわれ、病状がかなり進んでも自覚症状がありません。腎臓も同じだったのです。
 自覚症状がないこともあり、仕事が忙しかったので、実際に治療を受けるようになったのはその2年後。
当時の主治医からは、
「腎臓の状態を常に調べていきますが、治療法はありません、血圧を下げるぐらいです」
といわれました。
 しかし、痛くもかゆくもない病気と闘うのはむずかしい。しかも腎臓の具合は、血液検査でしかわからない。なにしろ血圧を低く保つのが重要だということはわかりました。
そこで毎日血圧を測るようにしました。血圧も測らなければわかりません。
ついでに体重も毎日測ることに。
 血圧は、塩分を控えたり、よく体を動かしたりすると、それに反応します。糖尿病や高血圧のような自覚症状が乏しい病気と闘うには、自分の体の状態をみえるようにすることです。毎日体重を測っていれば、太ることはありません。
 腎臓病という一病のおかげで、わたしは体を測るというもっとも
懸命な健康法を獲得しました。無病息災より「一病息災」。病気がいろいろ教えてくれたのです。
 わたしにとって一病息災がいちばんです。

蒲谷茂(医療ジャーナリスト)高根町在住。自分の体は自分で守るがテーマ。FM八ヶ岳のパーソナリティ。著書に『自宅で死にたい』(バジリコ)『歯は磨くだけでいいのか』『民間療法のウソとホント』(ともに文春新書)など。

*「八ヶ岳ジャーナル」を一部改変。