がんは気づきの病

がんになって知ったのは、「がんは気づきの病」だということ。
何に気づくのでしょうか。
いちばん大きなことは寿命に気づいたこと。
なんとなくいまの高齢者のように80歳、90歳と長生きできるだろうと思っていたのだが、
そんなに長生きすることはできないんだなと知りました。
生きている限り、誰にも寿命はあります。
寿命は、人によって異なるわけですが、自分の寿命を知ることは大きな出来事でしょう。
寿命があることに気づかせてくれたのです。
寿命を知るといっても、すぐに亡くなるわけではありませんから、いろいろ考える時間があります。
そうした時間が与えられたといってもいいでしょう。
いままで生きてきた人生を振り返り、これからの人生についても考えるようになります。
漫然と生きてきたとは思いませんが、生きていることの大切さを知りました。
前回の連載コラムで「生ききる」と書きましたが、ただ生きるだけでなく、生ききることが大切と思いました。
確かにがんを告げられた人の手記の多くに、「生ききる」という言葉が見つかります。
限られた命を十分に生ききりたい、と願うのです。
毎日が大切な日々なのです。
また、わたしを支えてくれている人たちにも思いを抱くようになります。
現在、放射線治療を受けているのですが、
医師も看護師も薬剤師も医療スタッフ全員が、わたしの命を守ってくれているのです。
治療に毎日病院に通っているので、なおさらそれを感じます。
そして、なにより家族が、わたしのことをいちばんに気にかけてくれています。
家族だけではなく、周囲の人たちの思いを素直に受け取ることができるようになりました。
感謝です。
それは、たいへん大きな「気づき」です。
生きることはひとりではないんだ、とつくづく感じています。
わたしの尊敬する先輩が『がんはいい病気』という本を書きましたが、本当にそんな気がしています。
できれば、いろいろ気づかせてくれたがんと共存しながら、生きていければいいなと思っています。

地元紙『八ヶ岳ジャーナル』のコラム「自分の体は自分で守る」より