深夜2時には寝ていたい

1. 何時間ぐらい寝ていますか
さて、どのくらいの寝るのがいいのでしょうか。
愛知医科大学の公衆衛生学の玉腰暁子教授が、日本人約11万人に睡眠に関するアンケート調査をし、それを10年間にわたって追跡調査をした論文があります。アンケートをしただけでなく、アンケートに答えてくれた人たちを追跡調査したのがすごいですね。
追跡調査は、10年間にわたって回答をいただいた人の死亡率を調べています。睡眠時間は年齢と関係しますから、年齢による影響を排除したものです。
すると、7時間(正確には6.5〜7.4時間の間)の人の死亡率がもっとも低く、それより長くても短くても死亡率が高くなることがわかりました。
睡眠時間7時間の人がいちばん長生きするというデータはアメリカにもあり、今回の調査で日本人も同様の結果が出たことになります。
平日の睡眠時間を1時間ごとに区切り、死亡リスクを棒グラフにすると、短くても長くても死亡率が高くなり、7時間がいちばん低かったのです。
睡眠時間7時間の人のリスクを1とすると、4時間以下という短い場合男性では1.62倍、女性は1.60倍高い。反対に10時間以上でも男性で1.73倍、女性で1.92倍も死亡率が高かったのです。
睡眠時間は、そのときに感じていたストレス、病気、喫煙、飲酒などの影響がありますので、その影響を差し引いて検討するために、うつ症状、自覚的ストレス、喫煙や飲酒、教育歴、どんな病気をしたかという既往歴を計算に入れ、さらに調査時点で重篤な病気にかかっていたために睡眠時間に影響を与える可能性を考慮して、調査した人で2年間に亡くなった人を差し引いて分析しました。
すると、男性では睡眠時間が短い人では死亡率のリスクに変化はなかったのですが、女性の場合4時間未満の睡眠時間の人のリスクが2倍にふえました。女性の場合には、睡眠時間が短いのは注意が必要というわけです。
なぜ、睡眠時間が短くなると、死亡率が高くなるのでしょう。
それは、高血圧や糖尿病になる可能性が高くなるからといわれています。睡眠時間が短いのは、それだけ十分に休養がとれていないというわけで、その結果からだに無理が残り、高血圧や糖尿病になるのではといわれています。
一方、7時間より長い睡眠時間が長い人も、死亡リスクが上がることがわかりました。本人が気づいていない病気が潜んでいて、それが睡眠時間を長くしているのでは、という予測もあります。
7時間の睡眠が体にいいかどうかは、睡眠時間の短かった長かった人に7時間睡眠してもらい、検討してみないといえませんが、集団を調査した結果は7時間睡眠の人の死亡率がいちばん低かったのです。
眠る時間は7時間がいいようです。
8時間睡眠がいいといわれたのは、24時間の3分の1という、あまり根拠がないものだったのです。

2. よく眠る人は若々しい

睡眠中に分泌されるホルモンに成長ホルモンがあります。寝る子は育つといわれていますが、寝ている間に成長ホルモンが分泌されるからです。成長ホルモンというと、体の成長に関係するホルモンですが、骨や筋肉の成長だけではなく、食べものから入ってきた栄養を体の組織に変える代謝を促進したり、血糖値をコントロールしたり、脂肪の出入りを指示したり、さまざまな働きをしていることがわかりました。美容にも関係があります。
そして、成長ホルモンは若い人ほどたくさん分泌されます。
アメリカでは、成長ホルモンを使って若返りの効果を調べていますが、いまのところ効果があったのは皮膚でした。若返りについてはまだまだ研究段階ですが、成長ホルモンが肝臓に働きかけ、「IGF−1」(インスリン様成長因子1)という物質を分泌させることがわかっています。
インスリンに構造が似ていて、作用もよく似ているので「インスリン様」といいますが、このIGF−1は、年をとると分泌量が減っていくので加齢のバイオマーカー(生物指標)として注目されています。
成長ホルモンがIGF−1の分泌を促します。ですから、睡眠が長生きに関係していることは間違いがありません。
ちなみに、成長ホルモンがよく出てくる時間帯は午前2時ぐらいから4時ぐらいにピークがあります。ぐっすり眠って、夜できるだけ起きないようにしたほうがいいようです。

3. ぐっすり眠るために
よく眠るために、皮膚の温度、皮膚表面の温度が高いほうがいいようです。
赤ちゃんは、眠くなってくるとてのひらが温かくなってきます。これは手足の表面から熱が放散されるからですが、手足は温かくして、からだの奥の温度を低くしようとしています。からだの奥の温度のことを深部体温といいますが、この深部体温が低くなると眠りも深くなります。
そして、からだの表面の温度と深部体温の差が大きいほどよく眠れます。
からだを芯から温めて、深部体温が高くなったままの状態ではすぐには眠れません。熱いお湯に入って、深部体温まで上げてしまうのはよくないようです。
一方、温めのお風呂に入るのはいいのですが、それでもからだを十分温めてしまうと今度がなかなか眠れません。
風呂から上がって暑いのは、皮膚に汗をかいて体温を下げようとしているわけです。
お風呂上りで熱くても、深部体温が高くなければ、眠れます。
この加減がむずかしい。深部体温を測ることはあまりしませんから。深部体温は直腸で測ります。

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