DASH食を食卓に

1. DASH食をご存じですか
アメリカで研究され、話題になっているのがDASH食です。Dietary Approaches to Stop Hypertensionの略ですが、高血圧を防ぐ食事方法です。アメリカ国立心臓・肺・血液研究所が高血圧の人向けに開発した食事療法です。アメリカでも高血圧に悩まされている人が多く、DASH食は具体的に食事の仕方を提案し、たいへん効果をあげています。
高血圧は、日本人の4000万人にかかっている国民病といってもいいでしょう。
ご存じでしょうが、高血圧は脳卒中、心臓病といった死にいたる病の最大の原因です。血圧を低め低めにコントロールすることが、健康長寿にはたいへん重要です。
DASH食は、減塩とともに、日本人の食卓に欠かせないといえるでしょう。
DASH食には、ふやしたいものと減らしたいものがあります。
ふやしたいものを栄養素でいうと、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、たんぱく質です。一方で減らしたいものは、飽和脂肪酸コレステロール飽和脂肪酸は、豚肉、牛肉に含まれている脂質です。コレステロールも豚肉や牛肉に含まれている動物性脂肪です。
ふやしたいものを解説していきます。
カリウムカリウムは、血圧を上げるナトリウムの排せつ
カリウムは、からだのなかの細胞に含まれ、細胞外液(細胞の外にある液体で、血漿と間質液がおもです)に多いナトリウムとバランスをとって、細胞が正常に働くようにしています。ナトリウムがふえると、カリウムがナトリウムの尿への排せつを促しています。腎臓の機能の障害がなければ、尿に排泄されます。
ナトリウムの増加と血圧の関係ですが、ちょっと専門的になりますが、血圧が高いということは、「細胞外液と血管の硬さの積」といわれています。細胞外液のひとつは、血漿と述べましたが、血漿は血液に含まれている水分です。この量が仮に多くても血管がしなやかであればいいのですが、硬くなると、血管の壁を押す力が強くなり、血圧が上がるのです。
血漿の量を減らすか、血管の壁をしなやかにすることが血圧を下げることになります。そして、血漿にナトリウムが多いと、これを薄めるために水分が必要になります。その結果、血圧が上がります。
わかりやすくいうと、塩辛いものを食べると水をとりたくなりますが、細胞外液が水分を欲しているのです。
ナトリウムがふえたときにカリウムが減らそうとしてくれます。
カリウムがナトリウムとのバランスをとっては血圧を下げるのです。
カリウムの多い食品を日ごろからとる必要があります。
カリウムの多い食品は、ジャガイモなどもイモ類、カボチャ、春菊、サヤインゲン、枝豆、大豆食品、アボガド、バナナ、柿、海藻類などです。
<カルシウム>DASH食の研究から有効性が実証
カルシウムが血圧を下げるという直接的な関係は、DASH食を検討しているときに、カリウムマグネシウム、食物繊維とともとると、血圧を下げることがわかったのです。カルシウムそのものも日本人に唯一不足している(厚生労働省の統計より)といわれていますし、骨粗鬆症などの予防に欠かせないので、ぜひともとりたい栄養素です。
カルシウムの多い食品は、牛乳、ヨーグルト(牛乳やヨーグルトは吸収率がよい)、ゴマ、モロヘイヤ、小松菜、小魚、豆腐など。
マグネシウム>カルシウムと協働して血圧を下げる
マグネシウムは、カルシウムの働きと拮抗しています。バランスがよければ、お互いの働きがよくなります。カルシウムは、筋肉や血管の細胞に入って、収縮させる働きがありますが、マグネシウムはカルシウムの働きを抑制し、必要以上に血管の収縮を抑え、血管を拡張させます。バランスが重要なのですが、マグネシウムとカルシウムが1対2が理想といわれています。
マグネシウムが多い食品は、大豆食品、ナッツ類です。また、玄米、もしくは雑穀を入れると、かなりとることができます。食事からとっていれば、過剰症になることはありません。
多い食品は、カシューナッツ、アーモンド、ゴマ、納豆、ヒジキ、ワカメなど
<食物繊維>無理なく血圧を下げるすぐれもの
食物繊維は、わたしたちの消化酵素では消化できないものです。腸内で余分な脂肪や糖質を吸着し、からだの外に出してくれます。血圧に関しては、ナトリウムを包み込んで、排泄してくれます。水溶性の食物繊維がその働きをしてくれます。
水溶性の食物繊維が多い食品は、リンゴ、オクラ、モロヘイヤ、山いも、こんにゃく、海藻類。
たんぱく質>血管を丈夫にする
たんぱく質は、わたしたちのからだを構成している重要な成分です。もちろん血管もそうです。血管をしなやかに保つためにも欠かせません。
たんぱく質が重要なことがこのブログでも述べましたが、積極的にとってほしいものです。
多い食品は、牛肉や豚肉ですが、赤身の部分で選んでください。魚介類、豆腐や納豆などの大豆食品、牛乳など。
減らしたい食品は、肉の脂身、レバー、バターなどです。
高カロリーというわれる食品はできるだけとらないようにしましょう。

アメリカで公開されているDASH 食を見ると、パンは全粒粉、ほかには、シリアル、オートミールを勧めています。お勧めの野菜は、ブロッコリー、ニンジン、グリーンピース、ケール、ジャガイモ、ホウレンソウ、カブ、トマト。果物では、リンゴ、バナナ、ブドウ、オレンジ、グレープフルーツ。牛乳は、脂肪を除外したもの、もしくは低脂肪にすること。肉の脂肪は見た範囲から取り除くこと。とりたいものはナッツ類、甘味料はメープルシロップ、砂糖などです。
なぜか魚がまったく入っていませんでした。

ここでDASH食の注意点を上げておきます。それは、高血圧といわれている人で、腎臓などに障害がある人は、カリウムなどをとることはかえってよくありませんので、血圧だけが高い人が対象となります。
血圧が高めといわれた人は、腎臓などの検査をきちんと受けてから、DASH食をはじめてください。