筋肉が糖を食べる

サルコペニアについて少し話をしました。筋肉量が減っていく病気ですが、当然筋力も衰えて、転びやすくなったり、骨折しやすくなったりして、寝たきりを招く原因となります。
筋肉を鍛えておく、もしくはふやすことが肝心です。
筋肉をふやすには、いわゆる筋トレがいいのですが、そもそもふだんから筋肉を使うことを心がけるのが重要です。
筋トレでなくても、ウォーキングでもいいし、ジョギングでもいい。
ところで、糖尿病に運動療法が欠かせないとよくいわれます。
糖尿病になぜ運動がいいかというと、それには筋肉の大きな役割によります。
わたしたちが動くには筋肉が働いていますが、バーベル上げなど筋トレをすると、まず消費されるのは筋肉の中に貯えられているATPというエネルギー源です。
さらに運動を続けるとクレアチンリン酸という物質からATPをつくり、消費していきます。
さらに運動を続けると今度は同じく筋肉に含まれているグリコーゲン(エネルギーに変わりやすいブドウ糖がつながっているもの)をエネルギーに変えて使います。
ここまでは、エネルギーをつくるのに酸素をいりません。33秒間こうした運動は続けられます。
100m走とか短距離走や水泳でも50mのような短距離のときは、酸素を使っていません。これが無酸素運動です。重量挙げなどもその典型ですね。
33秒を過ぎると、筋肉の中のグリコーゲンを減ってきますので、エネルギー源として、脂肪を分解してATPをつくりだします。ここからは酸素が必要になります。有酸素運動です。肥満を解消する、つまり脂肪を減らすには有酸素運動が有効というわけです。
そして、有酸素運動をして休んでいるときに、筋肉では減ったグリコーゲンを再び作る必要があり、そのとき筋肉に大量に糖を血液中から取り込むのです。
ここで重要なことはこの過程でインスリンを必要としません。
糖尿病は、インスリンを分泌している膵臓の働きが悪くなり、その結果、血液中に糖があふれる病気です。ですから、インスリンを利用しないで血液中から糖を吸収する、筋肉の働きはたいへん重要です。
からだを動かし、筋肉を使い、血糖を減らす。
糖尿病に運動が最適なんですね。
欠かせないといってもいいでしょう。