みんなわたしのせいとといわれたくないのですが

・同い年で体脂肪7%
知り合いが、病気になったことをきっかけに、ウォーキングをはじめました。入院生活を送るなかで、目が覚めるのが早くなり、手持無沙汰もあって、朝食前に1時間のウォーキングをはじめたそうです。1時間、6キロといいますから、ご本人はゆっくり散歩をおっしゃっていますが、なかなかの速さです。不動産屋が駅からの距離や時間を紹介していますが、これは1分間に80メートル歩くのが基本となっているそうです。これで行くと、1時間に4.8キロ、お年寄りから子どもまでの平均はおおむね1時間に4キロですから、やはり早いといえます。
運動ではなく、散歩だから続けられたといいますが、いまや旅先では30キロ50キロと歩くことも稀でないといいますから、ウォーキングがすっかり習慣になったようです。
わたしの学生時代からの友人で、定年退職した後、午前中は図書館に行って好きな作家の本を読み、午後はジムに通ってウォーキングや筋肉トレーニング、水泳をするという、すごいやつがいます。
もともと学生時代に空手部に属して、有段者ですが、40歳ぐらいと糖尿病と診断されました。営業職で、ほとんど毎日接待の日々だったといいます。運動をしたくても、なかなか時間もとれず、しかも単身赴任で、これが糖尿病の引き金を引いたと思います。
その後、一念発起して、食事に注意するようになったのですが、やはり食事だけでは上手にコントロールができないとわかり、運動を取り入れたのです。最初は会社の休みの日だけだったのですが、そのうち仕事が終わり、宴会などがないときはせっせとジムに通ってトレーニングをしていたようです。もともと体を動かすことが苦にならないといっていましたが、運動する習慣が残っていたのだと思います。
それがいまは、自由に時間がつかえるので、毎日のようやっています。わたしより一つ上ですが、体脂肪が7%台、引き締まったからだをしています。我が家に一年に一度泊まりがけで遊びにくるのですが、いっしょに近くの温泉に行きます。わたしのからだをしみじみみて、何とだらしないといいます。わたしは筋肉トレーニングなんてしませんから、致し方ありません。もともと運動は苦手ですし、体操も嫌いですし。
これもみな習慣になっているので、ご本人たちにとってはもちろん苦しいものではなく、毎日生活の一部です。
いいことは、ぜひ習慣にしたいものです。

・成人病から生活習慣病
ところで、昔成人病といった病気が生活習慣病と改められました。この提案したのは、聖路加国際病院日野原重明先生。
成人病というと、高血圧、糖尿病、動脈硬化などが代表です。大人、成人だけがかかる病気のように思われますが、実際は、10代の若者にも成人病といわれる病気にかかる人がいますし、30代になるとふえてきます。
年齢で区分するより、これらの病気は、日ごろの習慣によって左右されるので、生活習慣病のほうがいいのではないか、というわけです。
習慣にもいい習慣もあるし、悪い習慣もあります。悪い習慣が病気をつくるからというわけです。
習慣のすべてが悪いわけでありません。できるだけいい習慣を身につけたいと思います。これには異論はありません。

・みんなあなたが悪いのですといわれたくない
成人病が生活習慣病にいいかえられたのですが、親しい医師が、病気の原因をすべて習慣によるとしていいのだろうかと、いっていました。
たとえば、夜食べてしまう習慣をつくりだすのは、夜中でも開いているコンビニがあるからではないでしょうか。自宅でつくるより簡単に、すぐ近くで食べものが手に入ります。しかも、24時間が営業していますから、それこそ夜中に行っても食べものが手に入ります。これは便利なのですが、夜遅くに食べる習慣は必ず肥満になります。
現代人は歩かなくなったといいますが、これもエレベーター、エスカレーターが普及したことも影響しているでしょう。わたしたちが子どものころ、エレベーターがあるのはデパートだけでした。あまり高い建物もなかったのですが、階段を上るのが普通でした。エスカレーターは本当に珍しいものでした。それはいま駅に行けば、どこにもあります。この辺の少し古い駅にはありませんが、新しい駅には必ずあります。
わたしの例をあげましょうか。FAXがなかったとき、書き上げた原稿は郵便で送っていました。まだ子どもたちが小さいころ、夏休みに長野県木曽に友人家族といっしょに行ったのですが、依頼されていた原稿が書き終わらず、みなが遊んでいるとき、ひとりで部屋で原稿を書いていました。そして、書き上がった原稿を、駅前の郵便局まで行き、速達で送り、それからゆっくり夏休みを楽しみました。東京でも、郵便で送るために、郵便局まで行かなければなりません。原稿だったので、書留で送っていましたから。ですから、FAXが自宅に入って、ずいぶん助かりました。でも、おかげでからだを動かす機会がひとつ減りました。
からだを動かすことが当たり前で、いつもそれが求められているという状態は現代ではありません。
交通機関の発達、通信手段の進歩は、わたしたちが動かなくてもすむようになりました。これが習慣となり、運動不足となったわけですから、これはすべて個人の性とはいえないでしょう。
個人の持っている習慣が悪いといいますが、その習慣をつくりだしているのは、社会かもしれない。
しかし、この便利な社会を変えることができないでしょう。
なんでも個人の行いに転化してしまうのはどうだろう、というわけです。

・あなたの一日を調査
患者の悪い習慣を突き破るために、医療者の側は何をすべきなのかというのが、親しい医師の言葉です。
身についてしまった悪い習慣をどのようにして克服することができるか。
からだにいい習慣をどうすれば身につけることができるか。
これが大きな課題ですね、と親しい医師はいいます。
彼は、じつは糖尿病の専門医です。
なおさらそう思ったのです。
そこで、彼は何をしたのでしょう。患者の話を徹底的に聞くようにしたいのです。初診の患者がくると、1時間は話を聞きます。患者さんにインタビューしたのですが、いままでこんなにお医者さんと話ことはありません、なんでも聞いてくれましたといっていました。
患者はなにを思っているのかを知り、そして生活を聞くことで、できることは何かを知ろうとしているのです。
運動をしてください、歩きましょうというだけで、患者はやってくれない。できることは何かを調べることです。そのために、その人となりや生活ぶりを知らなくてはなりません。
また、できないことを指導してもやってくれるわけはありません。1万歩歩きましょうといっても、それがどのくらいの運動になるのか、自分で知らなければ、ダメだといって、医師自ら歩いています。自宅からクリニックまで歩いたこともあるようです。1万歩歩くのはけっこうたいへんだということもわかり、「あなたならまず3000歩からはじめてください」というようにしたところ、歩きはじめてくれた人もいるようです。
悪い習慣を変えたり、反対にいい習慣を取り入れたりするのは、なかなかむずかしいことです。
医師の助言ですが、自分の生活をしっかり省みることだそうです。
わたしも反省してみます。