寝るほど楽はなかりけり

わたしの母は、明治生まれ。当時はまだ珍しいうちに入ると思いますが、職業婦人(古い)で、美容師の免許を持っていました。日本ではじめて美容師の免許をとったうちのひとりで、作家の吉行淳之介さんのお母さん、吉行あぐりさんといっしょですね。そのころの女性の多くは日本髪でしたが、大正期に入り、生活の欧風化が進み、女性の社会進出もはじまりました。そうした背景もあり、徐々に洋装の人もふえ、パーマの需要も生まれました。でも、まだまだそういう人は少なく、わたしの母は、名古屋のデパートで働いていました。
その母がよくいっていたのが、「寝るほど楽はなかりけり」です。『浮世の馬鹿は起きて働け』という言葉がつづくのですが、「小欲知足」必要以上のお金を持っても仕方がないという意味もあるようですが、疲れがたまったり、思うようにうまくいかないときに、まずひと晩ゆっくり寝てから考えようというように使っていました。
疲れをとるにも、いちばんいいのは寝ることです。からだを動かした後は、眠りも深くなるようです。その結果、疲れもとれるでしょう。
今回は、疲労回復にいい食べものを紹介しましょう。

渡り鳥はアラスカからニュージーランドまで1万1千キロを9日間で飛ぶものもあります。2週間以上飛び続ける渡り鳥もいます。こうした渡り鳥の疲れ知らずのもとは、どこにあるのでしょう。
秘密は渡り鳥の胸肉にありました。渡り鳥の胸肉には、イミダゾールジペプチドという物質が含まれています。この物質は、渡り鳥以外にも、時速100キロで泳ぎつづけるマグロやカツオなどの魚にも含まれています。
この物質は、1900年に動物の筋肉細胞から発見されました。その後さまざまな研究によって、疲労回復作用のあることがわかりました。
疲労は、必ずしも肉体的なものだけでなく、疲労感といわれるものもありますので、一概にいえません。
わたしたちのからだを動かしているのは、栄養分と酸素です。栄養を酸素で燃やしてからだを動かしています。
疲労について、現在わかっていることのひとつは、からだを動かしたときに過剰に酸素がとりこまれ、それが活性酸素となって、筋肉や神経の細胞に働いて疲労を起こすという説です。イミダゾールジペプチドという物質は、この活性酸素を取り除いてくれるのです。
イミダゾールジペプチドは、渡り鳥ではありませんが鶏の胸肉に含まれています。ですから、鶏の胸肉をとっておくと、疲労回復に役立つでしょう。マグロやカツオもいいと思います。

豚肉も有効です。豚肉に含まれているビタミンB1は疲労回復に役立ちます。さきほど、エネルギーは栄養分を酸素で燃やすことで生まれると述べましたが、ここでビタミンなどの微量栄養素が必要になります。からだを動かすと当然ビタミンも使われ、とくに運動をしたあとに、ビタミンB1をとると疲労回復に有効といわれています。
体を激しく動かした後、筋肉痛になることがありますが、このときにもビタミンB1が筋肉痛を和らげます。
ビタミンB1は、多いのは豚肉。ヒレ肉100gをとると1日の必要量がとれますので、大いに活用したいものです。ちなみに牛肉の10倍もビタミンB1が含まれているそうです。
また、豚肉をとるときに、クエン酸をいっしょにとると効果的。豚肉を食べすぎると、ピルビン酸という物質がふえ、これが体内に疲労物質のひとつである乳酸をたまりやすくしてしまいます。クエン酸は、ピルビン酸をクエン酸に変えてくれ、なおかつ乳酸を分解してからだの外に出してくれます。
クエン酸は、レモンやグレープフルーツなどのかんきつ類、イチゴ、パイナップル、キイウィ、梅ぼしなど。豚肉の生姜焼きを食べるときにレモンを絞ってかけたり、食後にグレープフルーツなどの果物をとるといいでしょう。

稲刈りで少し疲れたので、鶏肉を食べました。